服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第788回
白麻スーツの美学について

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
中谷 様から
「パナマハット」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ 中谷 様にいただいたメール

件名:パナマハットについて、お尋ねしたいのですが

いつも楽しくお話を伺っております。
パナマハットについて、
お尋ねしたいことがありまして、
メールいたしました。

私は55歳になりますが、
そろそろ照れないで、麻の白いスーツを着て
パナマハットをかぶってみようと思いはじめました。
30年ほど前、
CROSS & SIMON(くろすとしゆきさんのお店)に
通っていましたが、
その頃作っていただいたスーツは、
1、2度着ただけでした。
靴はチャーチのフルブローグのWhite Buck
(ブラウンの革底)がありますので、
昨年思い切って生成りではなく、
真っ白のゼニアの生地で、
1つボタンの麻のスーツを作ってもらいました。
生成りで2つボタンの方が良かったかと
少し後悔しています。

お尋ねしたいのは、
昼間パナマハットをかぶって出かけて、
夜になってしまった場合のことです。
スーツは仕方ないとして、
パナマは、昼用と思われますので、
暗くなった後は少し気が引けるのですが、
手に持って帰るか、預けてくるか、
かまわずかぶって帰るか、
どうすればいいでしょうか?

白の麻のスーツの着こなしと
心構えもお願いします。
(心構えしないことでしょうか?)
お忙しいところ、
恐れ入りますが宜しくお願いします。
最後に、出石様のご健康とご活躍を
お祈り申し上げます。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
有難うございます。
また、いつもお目通し下さっているご様子にも、
重ねて感謝申上げます。

白麻のスーツですか。
羨ましいですね。
白麻のスーツこそ、
本物の大人にこそふさわしいものです。
私も大いに応援しておりますから、
ぜひ着こなして下さい。

白麻のスーツは
日本人の白足袋の精神と似たところがあります。
汚れやすいところに
汚れやすい色をもってきて、
さらにそれを汚すまいとする心意気にこそ
意味があるのです。
つまり白麻のスーツがシワになるのは、
ちっとも恥しいことではありません。
が、それが汚れてしまっているようでは、
資格なしと言われても致し方ないのです。
むしろシワについては
白麻の勲章くらいに考えても良いでしょう。

汚れやすい時期に、汚れやすい色を、
汚れないように着ようということですから、
多少心の「ハリ」が必要になります。
というよりも
この心の「ハリ」が快感になるような人にこそ、
白麻がふさわしく、
また似合ってもくれるのです。

テーマは「自由なドレス・アップ」。
アクセサリイの色や柄については、
思いきったものを選んで結構です。
ただし、白麻には
やはりドレス・アップの小道具が似合います。
たとえば黒のスカーフよりも、
ピンクのネクタイです。
だからこそ
「自由なドレス・アップ」と申上げるのです。

戦前の男たちにとっては白麻は
夏の制服のようであったものです。
昔の小津監督の映画を観れば
すぐに分ることでしょう。
この美学をぜひ若者にも
伝えたいものではありませんか。

ところでパナマ・ハットをどうするか。
もしパナマ・ハットが純粋に陽よけ帽なら、
夜間にはふさわしくない。
でも、陽よけでもあり、
またそれ以上におしゃれ用であると考えるなら、
全体の服装の一部として常に必要なのです。
要するに服を上手に着こなすことは、
単にカタチの問題ではなく、
ココロの問題なのです。


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