服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第799回
雨傘の美学

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
中村 龍太 様から
「雨傘」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■中村 龍太 様にいただいたメール

件名:雨傘について、お尋ねしたいのですが

私は服飾の学校に通っている19歳の学生です。
最近このサイトを知り
1週間ほどで全部読みました。
とても勉強になりました。

日々の楽しみが1つ増えました!

雨傘についてお尋ねしたいことがありまして
メールいたしました。

梅雨に向けて
傘を購入しようと思っているのですが
(現在マリア フランチェスコの傘を第一候補に考えています。)
選ぶ際の注意などがあったら教えてください。
お忙しいところ恐れ入りますが
宜しくお願いします。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また、コラムにお目通し頂いていることにも、
重ねて御礼を申上げます。

傘を購入する際に、
もっとも大切なことは長さです。
つまり石突(いしづき)から手もとまでの長さ。
最近はカノピー(布部分)の長さを
55センチと60センチとか表示することが多くなっています。
でも、私の言う長さは、傘全体のことなのです。

傘は開いた時には雨除けの道具となり、
畳んだ時には男のステッキとなる
不思議な装身具なのです。
純粋に道具であれば機能美だけで良ろしい。
けれどもステッキとなると、
全体の美しさが問われるのです。

たとえば手に持った時のバランス。
ステッキが長すぎたり、
短すぎたりするのは、滑稽でしょう。
もう少し具体的にいえば、
軽く右手で持って、
どの位の角度で肘が曲るのか。
その人自身の身長、
それから好みの問題があります。
実際に鏡の前で、
傘(ステッキ)とのバランスをたしかめるべきです。

また一般論として細巻きの傘ほどドレッシーで、
太くなればなるほど、
スポーティーな服装にふさわしい傘とされます。
もし可能なら、細いドレッシーな傘と、
太いスポーティーな傘とを、
服装によって使い分けたいものです。

次はハンドル(把手)をどうするか。
クラシックなところでは
竹や籐(とう)などもありますが、
これにも好みが反映されます。
軽くて、丈夫、そして手ざわりの良い材質が良いのは、
言うまでもありません。
昔は石突(傘の先端部)に水牛の角などを使って、
突いた時の音と感触が良い、などと言ったものです。
が、減りやすい割に高価であるのが、欠点。

さらにはカノピー(布部分)をどうするか。
合繊は軽くて、丈夫。
綿はおしゃれですが、雨に濡れると重くなります。
高級品には絹を張ります。
けれども使用後は必ず陰干しにしなければなりません。
いずれにしても自分で納得のゆく傘を携えていると
自然に背筋まで伸びて、
美しい姿にさせてくれるものです。


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