服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第800回
楽しい会話はいつもイエスから

トス・アップを知っていますか。
コインを投げ上げて、
その裏表を当てるおあそび。
ちょっとじゃんけんに似ているかも知れません。
この時たいてい“テイル・オア・ヘッド”
(裏か表か)と言います。
むかしのコインの表には
国王の顔が刻まれることが多かったからです。

人生は一枚のコインに似ている。
いつも裏と表は背中合わせ。
裏もあれば表もある。

同じことは会話における
イエスとノオについても
言えるのではないでしょうか。
イエスとノオは一枚のコインと裏と表。
「はい」も「いいえ」も結局は一枚のコインの裏と表。
世の中にはそういうこともあるのです。

たとえばAさんと私が
紺のブレザーの話をするとしましょう。
「紺のブレザーはいいですね」とAさん。
この時私が「いいえ、ブレザーは赤です」と言ったなら、
話はもうここで終ってしまいます。
Aさんはまったく別の話をするでしょう。
そして二度と私に紺のブレザーの話はしない。

けれども私が
「はい、そうです。紺のブレザーはいいです」と受ければ、
少なくとも30分位、
ブレザーの話を発展させることができるでしょう。
そしてこの発展のなかで、
赤のブレザーの話をすれば良いのです。
Aさんは紺の話をし、
私も赤の話をすることができる。
メデタシ、メデタシであります。

人は誰も「いいえ」と否定されるような話はしたくない。
「はい、そうですね」と肯定で受けてくれるから、
話をしたくなるのです。
ということは、結果において展開がどうなろうとも、
話に糸口をつけるには「イエス」であり
「はい」のほうが良いのです。
これはなにもイエスマンであれ、
と言いたいのではありません。

話し上手は聞き上手。
そして聞き上手は
「はい、そうですね」をうまく使うことにあると思います。
肯定から入るか、否定から入るかの
入口のかたちの問題なのです。
そしてたいていの場合、
ものごとは肯定的に考えたほうが、
うまくゆくものなのです。


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