服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第804回
箸に投資をする方法

箸(はし)をちゃんと使うことができますか。
私にはその自信がない。
三度の食事に毎回箸を使うとは限らない。
けれどもとにかく箸かフォークかで
食べものを口に運んでいるのだから、
使ってはいるのでしょう。
でも箸を正しく持っているか。
箸を美しく使っているか。
大いに疑問であります。

ときおり、男性であろうと女性であろうと、
また老若に関係なく、
箸づかいのまことに上手な、
美しい人を見ることがあります。
素直にいいなあ、うらやましいなあ、と思うのです。
そしてできることなら、
私もあんなふうに美しく箸を使ってみたいと、
真剣に考えるのです。

むかし見合いということがあった。
男女結婚する前に、お見合いをする。
もちろん今でもあるでしょうが、
むかしは必ずといって良いほどあった。
この見合いの席で食事をともにするのは、
その作法や流儀で、無言のうちに
「お育(そだ)ち」が知れたからだと言われています。

今、お見合いは少なくなったけれど、
いぜんとして箸の使い方で、
およそのその人柄なりを推測できるのに、
変りはないのでしょうか。
文は人なり、箸もまた人なり。
人の心の美しさは、
箸にあらわれるのではないでしょうか。

中国では昔から象牙の箸が良しとされる。
と同時に高価でもあります。
象牙であるか否かはさておき、
まず箸を意識することは大切でしょう。
箸に関心を持ち、箸を大事にする。
私にふさわしい箸はこれだ、
と誇りたくなるような
一膳を持っていたいものではありませんか。

食事のときの姿勢を正しくし、
しっかりと、上手に、美しく箸でつかむ。
だからこそ皿などから口までの長い距離を
優雅に運ぶことができるのではないか。
箸の使い方が下手だと、
どうしてもこの距離が短くなる。
これではあまり上品とは言えません。

箸に多少の投資をしたからといって、
身上つぶすことはないでしょう。
私も今から大切にしたい一膳を探そうと思います。


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