服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第836回
ひいふうみにはじまる優雅な会話

ものの数をちゃんと数えられますか。
どうかここでご立腹なさいませんように。
真面目な話なのですか。

たとえばここに大福餅が
いくつか並んでいるとしましょう。
さあ、数えて下さい。
「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」。
もちろんこれも数え方のひとつです。
これが仮にオペラなどの洋菓子なら、
あるいは子供ならそれでも良いでしょう。
でも、れっきとした大人が
本来日本のものを数える時には、
別の数え方もあるのではないでしょうか。

「ひい、ふう、み・・・」です。
もちろん誰もが知っている数え方。
ではその先を続けて下さい。
「よ」「いつ」「む」「な」「や」「ここのつ」「とう」。
時と場合によっては
「ひとつ、ふたつ・・・」よりも
「ひい、ふう・・・」のほうが
美しく感じられることもあるのではないでしょうか。
ただし何がなんでも口にすれば良いわけでなく、
あくまでもそのほうが自然で、
優雅であることが望ましいのですが。

ではカステラの場合、どうするか。
むろん「ひときれ、ふたきれ」でしょう。
大きい場合には「ひと箱」または「一本」、
あるいは「ひと釜(かま)」
という数え方もあるようです。
ようかんもややこれに似ている。
「いっ本(ぽん)」とも「ひと箱」とも。
けれども私は「ひと棹(さお)」と言ったほうが
美しいのではないかと、考えています。
ダンゴのように串に刺してあるものは当然、
「ひと串、ふた串・・・」でしょう。
同じくひし餅のように重ねてあるものは、
「ひと重ね、ふた重ね・・・」、
これも分りやすい。

あるいはまたしる粉。
なぜか甘いものばかり続くのですが、
さあ、難しい。
「ひと椀(わん)、ふた椀」
そうでなければ「いち膳、に膳」か。
金平糖なら、「いつ顆(か)、に顆」。
だんだん難しくなる。

要するにより美しい言葉への言い替えなのですが、
日頃からこんなふうに
頭のトレーニングをしていれば、
ごく自然に美しい言葉、上品な言葉が
口から出るようになるはずです。


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