服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第841回
松涛美術館に行こう

金太郎あめを知っていますか。
丸いあめで、金太郎の模様が入っている。
本当は細長いあめで、
これを筒切りにして完成する。
模様のひとつひとつは
ずっと長く続いているのですね。
次から次へと同じ形があらわれるような場合、
「金太郎あめみたい」というのはご存じの通り。

金太郎あめを学問的(?)に論じると、
「練込(ねりこみ)」と言うのだそうです。
ひとつひとつの色と形状とを重ねていって、
その断面を切断すると、
ある一定の文様があらわれる。
たとえばのり巻なんかもそうです。
ことに多様多彩に詰めた
太巻(ふとまき)なんかを横からみると、
たしかに芸術的です。
これもまた「練込(ねりこみ)」の一種といえるでしょう。

あるいは練込技法を木材で表現すると、
箱根細工になるでしょう。
箱根細工に限らず、
寄木の手法は世界中にあるのだそうです。
あるいはまたガラスで練込をすると、
ミルフィオリになります。
直訳すれば「千の花」ですが、
ペイパー・ウェイトをはじめとして
様ざまな工芸品が作られることはご存じの通り。

さて、どうして突然、練込の話になったのか。
渋谷、松涛美術館(TEL 3465-9421)で開かれている
「會田雄亮展」に行ってきたからです。
會田雄亮は有名な陶芸家で、
ことに陶芸で練込手法を駆使する
第一人者と言われています。

コーヒー・カップをはじめとする様ざまな食器。
あるいは置物、アクセサリー、
オブジェ、モニュメントと、
およそありとあらゆる対象物を、
陶芸と練込によって表現する作家。
その代表作品が一堂に展示されています。
陶芸に興味のない人でも、
これは一見の価値がありでしょう。

松涛美術館は
それほど大きな美術館ではありませんが、
渋谷からゆっくりと歩いた住宅街の中にあります。
散歩にも最適です。
一歩美術館に入ると、
とても都会のまん中とは思えない、
静かな、落着いた空気が流れています。
入館料300円は格安ではないでしょうか。
練込を見た後、
ゆっくりとお茶を飲む楽しみもあります。


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