服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第871回
おしゃれが幸福(しあわせ)を運んでくる

ダンディズムについて
考えたことがありますか。
むかしフランスの詩人、ボオドレエルは
ダンディズムについての本を
書くつもりだったそうですが、
結局は未完のままに終っています。
ダンディズムとは何か、
真面目に考えはじめると
少なくとも1冊の本になってしまうようです。

ごく分りやすく、
私なりに考えるとそれは
「おしゃれ道」ではないでしょうか。
茶道とか香道とかと同じように、おしゃれ道。
服の着こなしをひとつの道(どう)と考えて、
その道(どう)を
とことんきわめようとする考え方、態度。
こうなると時として、
人生のためのおしゃれではなく、
おしゃれのための人生になってくる。
つまりすべてのことがおしゃれ最優先になる。
ほとんど信仰に近くなってきます。

もしこれがおしゃれ道とするなら、
私がおすすめするのは
おしゃれ楽(がく)であります。
まず第一におしゃれをする当の本人が
楽(たの)しくなければなりません。
自分の身体と好みに合ったソファーに
ゆったりと腰を下すと、快適ですね。
大好きな、愛用の車に乗ると、楽しくなりますね。
それとまったく同じことが、
服を上手に選ぶことで起きるのです。

よく「勝負服」という言い方をします。
もともとは競馬のジョッキー服から
来ているのでしょう。
それは単に機能的であるだけでなく、
はっきりと心をゆさぶってもくれるわけです。

勝負服があるのなら
「快楽服」もあるでしょう。
それを身につけると自動的に心地よい、
楽しい気持になってくる。―
そして結局は上手な服の着方によって、
幸福(しあわせ)な人生を送ることができるのです。
「人はおかしいから笑うのではない、
 笑うからおかしくなってくるのだ。」
という説があります。
同じように心地良い服を着るから、
愉しくなってくるのです。

今の時期なら、とりあえず
上質の、薄手の、リネンのシャツを
素肌に羽織ってみましょう。
ほんの少しですが、
服が幸福を運んでくることを、
実感するでしょう。


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