服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第875回
わずか一滴幸福の水

ハンカチはいつも
どのポケットに入れていますか。
もっともこれはハンカチの枚数によっても
違ってくるでしょう。
そしてまたハンカチの枚数は
おしゃれ度とも関係してくる問題なのです。
当然、1枚より2枚が、
2枚より3枚がおしゃれ度が高い
ということになります。

さて、最初の1枚については
パンツのポケットに入れておくことが
多いのではないでしょうか。
ヒップ・ポケットか、サイド・ポケットか、
これは好みの問題であるかも知れません。
私の場合はたいてい
尻ポケットに入れておくことが多い。
もしも2枚持つということなら、
ヒップ・ポケットに1枚、サイドポケットに1枚
という方法もあるでしょう。

ところで3枚目をどうするか。
むろん場合によっては
2枚目のハンカチということもあるでしょう。
ごくふつうに考えるなら、
上着の内ポケット、あるいは鞄の中。
けれども私としては
上着の胸ポケットに入れておくことを
おすすめしたいのです。
胸ポケットも立派な収納部であります。
かてて加えて入れ方によっては
ポケッチーフの役割をも
果してくれるではありませんか。
夏、上着の胸ポケットから
白麻のハンカチーフなどが
さり気なくのぞいているのは、
爽やかな印象を与えるものです。

その第三のハンカチに
少々スパイスを加えてみてはどうでしょう。
この場合の「スパイス」とは
もちろんオーデコロンのことです。
拡げたハンカチーフの中心に
一滴のオーデコロンを含ませる。
スプレー式の場合なら、
ひと吹きのオーデコロンでしょうか。
その後に好みの形に畳んで
胸ポケットに入れておくわけです。

上着を羽織っているかぎり、
胸ポケットにハンカチが入っているかぎり、
かすかに良い香りが漂ってくるはずです。
その良い香りは知らず知らずのうちに、
あなたを心地良い、
上機嫌へと導いてくれるでしょう。
オーデコロンもまた、
人のためではなく自分のためなのです。


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