服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第881回
アパッシュ・スカーフの冒険

アパッシュという言葉を知っていますか。
よりフランス語に近い表現なら
“アパーシュ”apache であるかも知れません。
これは日本語の「ぐれん隊」、
「不良」に相当するフランス語。
ここから生まれた言葉として、
“アパッシュ・ダンス”とか
“アパッシュ・スカーフ”があります。

“アパーシュ”というフランス語は
それほど古いものではなくて、
1902年頃に当時の新聞が街の不良たちを指して、
ひわ的に使ったのがはじまり。
これは言うまでもなく
ネイティブ・アメリカンの
アパッチ族を借りての表現ですから、
今の時代ならちょっとした
問題報道とされたかも知れません。
でも、言葉とは生き物で、
今なお使われているということは、
それなりに認知を得ているのでしょう。

さて、アパッシュというのは不良ですから、
女持ちのハンカチーフなんかを取ったりする。
で、これを自分の首に巻く。
20世紀はじめには
さぞかし下品な風俗であったのでしょうが、
いつの間にか粋なスタイルとされるようになる。
いわばこの下克上もまた
ファッションの特性なのです。

それはともかく、
暑い時こそアパッシュ・スカーフが
ふさわしいのではないでしょうか。
ノオ・ネクタイでシャツを着る。
けれどもなにかもの足りない感じがする。
間の抜けた感じがする。
そこでアパッシュ・スカーフ。

アパッシュ・スカーフは
大判のハンカチーフで充分転用できるのです。
好みの色柄のハンカチを
何枚か用意しておけば良いのです。
コットンやリネンであれば、
簡単に洗って乾かすことができるでしょう。

ごく一般的には
細長く畳んで、首に巻き、前で結ぶ。
私としては赤や紺などの、
大胆な色のハンカチを選びたい。
少なくともシャツの色と
明快なコントラストが生まれるものが良いでしょう。

シャツの襟を立ててみたり、
前ボタンを大胆に外してみたり、
アパッシュ・スカーフから
また新しい着こなしが始まるはずです。


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