服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第880回
暑さを忘れる言葉あそび

1、2、3、4、・・・。
数の数え方を知っていますか。
そうは言ってもどうか怒らないで下さい。
言葉遊びの話なのですから。
暑い時には言葉遊びでもして、楽しみましょう。

たとえば鮨屋で一杯飲んで、
お勘定ということがある。
と、主(あるじ)がおかみさんに
「めのじ」なんてことを言う。
それでいくらということが分る。
符牒(ふちょう)スラングですね。
魚屋などで「めのじ」というのは「5」の意味。
つまり「5千円だよ」と伝えているわけです。
ついでながら他の数字はどうなっているのか。
1が「丁(ちょう)」、2が「イ(にんべん)」
3が「うろこ」、4が「だり」、6が「|(ぼう)」
7が「な」、8が「ばんどう」、9が「きわ」。

それぞれの商売によって
独特の数え方があるわけですが、
「きわ」(9)は比較的多く使われる符牒です。
これはおそらく数字の端ということから
はじまったものだろうと思われます。
江戸時代すでに数の符牒があったそうですから、
歴史的に眺めても古いものです。

一方、呉服商では
1が「俵(たわら)」、2が「笑(わらい)」
3が「酒」、4が「中」、5が「如」・・・と続きます。
これは「大黒さん、一に俵をふんまえて
二ににっこり笑わんす、三に酒を飲ましゃんす・・・」
という縁起物の歌をもとにしているわけです。

あるいは菜を商うところでは
野(の)、和(わ)、山(やま)、礼(わえ)、丸(まる)
棒(ぼう)、吉(きち)、目(め)、申(もうす)
と数えてゆく。
もちろん順に1、2、3、4、・・・を意味している。
また煙草屋などはごく簡単に
「いろはにほへとちり」を順に1、2、3、をあててゆく。

少し凝ったところでは
漢字のナゾナゾがあります。
「大無人」、「天無人」、「王無中」
「罪無非」、「吾無口」・・・と数える。
「吾」の字に口が無いのだから「五」というわけです。
ちょっとトンチ教室のような数え方もあるわけです。―
どうです、少しは涼しくなってきましたか。

でも符牒はやはり業界人のもので、
素人が当人の前で使うのは
あまり美しいことではありませんから、念のため。


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