服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第894回
胸ポケットのおしゃれ考

今着ているワイシャツに
胸ポケットは付いていますか。
というのは時によって
胸ポケットの付いていないシャツもあるからです。
「本格派は胸ポケットは付けないんだ」
という人もあります。
また、一方では、
「どうせなら左右両方にあったほうが便利」
とする意見もあります。

むかしのワイシャツは
今よりもずっと下着的でしたから、
多くはポケットが付いていませんでした。
これが時代とともに、
いわば「中着」となるに従って
胸ポケットが付くようになったものです。
純然たる下着であったTシャツが、
おしゃれ着になるに至って、
なかには胸ポケットが付けられる場合があるのと、
似ているかも知れません。

たしかにシャツの胸ポケットには
名刺入れなどには便利でしょう。
でもあまり厚いものや重いものを入れておくには
向いていません。
「付いてはいるけれども、使うことはない」
というもの、
ひとつのおしゃれな考え方だと思います。

もしもワイシャツを
註文で仕立てようというのなら、
胸ポケットの有無、
あるいは数なども自由に選べるわけです。
私なら多分、省略するでしょう。
ただしスポーツ・シャツの場合には別です。
今は主としてネクタイを締める
ドレス・シャツのことだと考えて下さい。

「どうせ使わないのなら、無くても良いのではないか」
と思うからです。
そしてもうひとつには左胸のあたりに
自分の頭文字を入れたいからでもあります。
“モノグラム”(組合わせ文字)と呼ばれるのは、
ご存じの通りです。
それも私の趣味としては、
シャツの色と同系色のモノグラムが上品だと思います。

時として、
袖や袖口にモノグラムをあしらうこともありますが、
これは胸ポケットが邪魔だから、
と理解することもできるでしょう。
よりクラシックなおしゃれを愉しみたいというのなら、
やはりシャツの胸ポケットは
不用であるかも知れません。
小さなメモ用紙くらいなら、
ダブル・カフスに入れておこう、
という人も出てくることでしょう。


←前回記事へ 2005年8月25日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ