服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第895回
秋刀魚めしの幸福

佐藤春夫を知っていますか。
もちろん昭和に活躍した詩人ですね。
<今日の夕飯に/ひとり/さんまを食いて/思ひにふける>
とはじまる『秋刀魚の歌』という詩があります。
その名の通り、秋刀魚(さんま)は秋の魚です。
今は一年を通して、いつでも手に入りますが、
たいていは冷凍保存物です。
が、これからの時期は生さんまが存分に食べられる。
もっとももの思いにふけるか否かは、
人それぞれの問題でありましょう。

さんまといえば10人が10人、
塩焼きでありましょう。
七輪に炭をおこして煙をさかんに立てて、
という焼き方は
今や贅沢なことになってしまいました。
まあ、焼き方はさておき、
さんまの塩焼きは日本人ならではの味わいでしょう。

私もまた日本人のひとりとして
さんまの塩焼きは大好物です。
けれどももうひとつ美味い食い方があるのです。
名づけて「さんまのまんま」。
つまりさんまごはん、さんまめしなのです。
鯛めしは有名ですね。
その鯛をさんまに代えてみる。
それが絶品中の絶品であること、
私が保証します。

まずはさんまを塩焼きにする。
ただし塩はごく少量にすること。
次に飯の用意。
白米ばかりでもよろしいが、
少し麦を加えるといっそう美味しくなる。
しょう油を適量加えた水で
この麦まじりの米を炊くわけですが、
この時にすでに用意の終ったさんまと、
針しょうがを加える。
まあ、さんまの大きさにもよりますが、
さんま一尾に対して1合半位の飯がよろしい。

さて、すこぶる誘惑的な匂いとともに
さんまめしが炊上る。
と、ここで頭と親骨とをのぞいて、
一種のまぜごはんに仕上げるわけです。
はらわた部分が貴重なスパイスとなってくれること、
申すまでもありません。
しかしこれがなんとも、美味い。
私の好みとしては
鯛めしよりも野趣に富んでいて、好きです。
きゅうりのぬか漬けでもあれば、
2膳3膳と食が進むのであります。


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