服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第903回
シャツの襟を生き生きとさせる方法

ポロ・カラーという
シャツの襟型を知っていますか。
もちろんこれは
ボタン・ダウン・カラーの別名なのです。

ところでこれとは別に
“ポロ・ネック”があるのをご存じですか。
ポロ・ネックとは
実はタートル・ネックのことです。
主としてアメリカでタートル・ネックで
イギリスでポロ・ネックと言うことが多いようです。

むかしあるアメリカ人がイギリスに行って
ポロ競技を観戦した。
その時、ポロ選手が襟先がパタパタ動くのを嫌って、
襟先をボタン留めにしていることに気づいた。
この風変りな襟型をアメリカで売出したところ、大成功。
ビジネスのヒントはポロ競技場に
落ちていたわけです。

時は1900年、人物はジョン・ブルックス。
当時のブルックス・ブラザーズの社長。
そのようなわけでブルックス・ブラザーズでは
今なお、“ポロ・カラー”の名で
それを呼ぶわけです。

今からざっと100年以上前には、
ボタン・ダウン・カラーは
純然たるスポーツ・ウェアであったのです。
そのスポーツ・ウェアにあえて
ネクタイを結ぶのが新しい、
と考えられるようになったのは、
もう少し後のことでしょう。

ところでボダン・ダウン・カラーで
いちばん大切なことは、ロール。
襟先をボタンで留めた時に生まれる、
ごく自然の丸み。
「う〜ん、ロール具合が美しいねぇ」
なんてことを言うわけです。
シャツ屋さんのほうでも、
このロールをいかに自然につくり出すかに、
さまざまな苦労をするのです。

これは少し理想であるかも知れませんが、
ボタン・ダウン・カラーには糊は不要です。
軽くアイロンをかけただけで、
襟にふわりとした丸味が
あらわれるようにして着るべきでしょう。
そんな時にこそ、
ボタン・ダウンはもっとも生き生きとして、
美しいのです。

世の中、簡単そうに思えることが
もっとも難しいことがあります。
ボタン・ダウン・カラーも
その一例であるかも知れません。


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