服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第908回
カルヴァドス物語

カルヴァドズはお好きですか。
広くいえばアップル・ブランデーのことですね。
正しくは“オー・ド・ヴィ・ド・シールド”。
りんごを原料とした蒸留酒の意味。
シードルがりんごを原料とした
醸造酒であることはご存じの通り。
これは淡く、軽い発泡酒で、
よくクレープに合わせて飲みます。

スペインはフェリペ2世(1527〜1598年)の時代、
イギリスに向う軍艦「エル・カルヴァドール」が
ノルマンディー沖で遭難した。
そこでこの一帯を“カルヴァドス”と
呼ぶようになったのです。
もっともその頃すでに
“オー・ド・ヴィ・ド・シードル”は
造られていたそうですから、
とても古い酒なのです。
ただしこれを
“カルヴァドス”の名で呼ぶようになったのは、
19世紀はじめのことなのだそうです。

北フランスは寒冷の地で、
ぶどう栽培には向いていません。
けれどもりんごには最適の条件なのです。
土地の人たちにとっては
ごく身近な酒ですが、
その中心地で作られる
“ペイドージュ”Pays d’Auge ともなれば、
極上品にして貴重品なのです。

かつて土地の人たちは、朝起きてまず
“カフェ・カルヴァ”を飲んだのだそうです。
これはコーヒーにカルヴァドスを加えた飲物。
寒い朝、頭をすっきりとさせ、
身体を温めてくれることを知っていたのでしょう。

一方、寒い夜にふさわしいものとしては、
“カルヴァドス・グロッグ”があった。
カルヴァドスに砂糖とレモンを加えて、
熱い湯を注いで飲む。
これで身体を温めてから、
眠りについたのでしょう。

ついでながら土地の人たちは
“カルヴァ”と略して呼ぶことがあります。
イタリアに“カフェ・コレット”があるのは、
すでにご存じでしょう。
同じようにコーヒーとカルヴァドスのミックスも
試してみたい気持になっています。
“カフェ・カルヴァ”。
コーヒーに少しカルヴァドスを滴らせるのか、
それともカルヴァドスに少しコーヒーを滴らせるの、
ちょっと迷ってしまうところです。


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