服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第915回
結び目の美しさの秘密

ネクタイの重さがどの位か知っていますか。
ネクタイでまず第一に気になるのは、幅でしょう。
広いのか、狭いのか。
次には、長さ。
ネクタイの長さは約140センチ前後。
そしてアメリカのものより
イギリスのタイがやや長い傾向にあります。

ところが意外に見逃されているのが、重さ。
今、試みに手持ちのネクタイを測ってみると、
約60グラム。
もちろんネクタイによっては
それよりも軽いものや、重いものがあります。
結論を先にいえば、軽いネクタイより
重いネクタイのほうが上質なのです。

どうして重いネクタイのほうが良いのか。
それはごくふつうに考えて、
重いシルク地で作られていると想像できるからです。
絹地には“ヘヴィ・シルク”という言葉があって、
緻密な量感のある絹地のほうが優れているのです。
ふくらみやシワの出方からして違ってくるでしょう。

ネクタイを結んだ場合にも、
ごく自然な、量感が生まれるでしょう。
その意味ではネクタイも、
金や銀やプラチナと同じように、
重いものを買えということになるのかも知れません。

ネクタイの重さにも関係してくるのですが、
“セブン・フォールド”と呼ばれる
ネクタイの仕立て方があります。
「七枚畳み」。
ネクタイ生地の内側に
芯地を入れて仕上げるのではなく、
ちょうど新聞を使って
オモチャの刀を作る時のように、
生地の両端を折ってゆく。
右から3回、左から4回。
計、7回畳んで仕上げるので、
“セブン・フォールド”。

これはすべて手仕事になり、
またそれだけ多くの絹地を使うことにもなるので、
今ではごく限られたメーカーでしか
作られていません。
値段ももちろん高価になります。
アメリカでは「ロバート・タルボット」
パリでは「シャルヴェ」が
今でもセブン・フォールドのタイを作っているのです。

それはともかく
ネクタイの量感の美しさが
実は絹の重さから来るのだ、ということは
覚えておいて良いかも知れませんね。


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