服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第940回
人を寄せつける香気の研究

花の匂いはお好きですか。
今、散歩道を歩いていると、
ふっと金木犀の香りに
とらえられることがあります。
花の姿よりも先に、美しい匂いが漂ってくる。
これは文句なしに心を和らげてくれます。

その小さな花の色は
たいていオレンジ色で、時に白い花もあります。
この黄色を「金」、白を「銀」と形容して、
金木犀と銀木犀。
名前からしてリッチではありませんか。
ただしこの「金」の花も「銀」の花も、
汚れた空気には弱く、
きれいな空気のなかほど
美しく咲くのだそうです。
いや、本物のゴールドやシルバーも
実はそうであるのかも知れませんね。

金木犀に限らず、
香りの良い花の前では人は立止まり、
大きく呼吸をして、頬をゆるめる。
とくに芳香を放つわけではない草木の場合、
たいてい人はただ通りすぎてゆく。
これも自然の摂理なのでしょう。
しかも金木犀はなんの見返りも期待していない。
ただただ静かに香りを流すのみ。

花に匂いがあるように、
人にも匂いがあります。
それは石けんの香り、
オーデコロンの香りとは別の、
その人その人が知らず知らずに漂わせている
空気のようなものです。
当然良い空気には人とお金が集り、
良くない空気には人とお金は通りすぎてゆく。
これもまた自然の摂理で、
当の本人がそのことに気づいているかいないか、
という問題ではないでしょうか。

花が開くから、香りがこぼれる。
人も同じように心が開くから、
ほほえみが生まれる。
まず最初に、何も期待せずに、
むしろ自分に対してほほえみましょう。
自分にスマイル、自分の心にスマイル。
そうするとゆっくりと心が開きはじめるのです。
それはやわらかな空気であり、エアーブであり、
雰囲気であり、目に見えないものです。
けれども人は誰でも
そのやわらかい空気を感じることはできるはず。
人が本当に美しいという状態は、
ただ黙っていても一種の香気
伝わってくることなのです。


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