服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第941回
タキシードの着こなしに勝利する法

タックスという言葉を知っていますか。
「あまり人をバカにするものではない、
 税金に決っているではないか」。
たぶんお叱りを受けることでしょう。
でも、そちらの「タックス」tax ではなく、
“タックス”tux のほう。

イギリスで“ディナー・ジャケット”
アメリカで“タキシード”と呼ばれることは
ご存じの通り。
そしてアメリカではごくふつうに
“タックス”と略称することが少なくありません。
そして tax と tux の音が似ていることから、
次のような言葉遊びも生まれます。
<タキシードは社交生活における税金みたいなものだよ>

今、着こなし上手の人たちの間では、
タキシードをいかに着崩すかが、
関心の的であるようです。
それというのもひとつには喜々として
タキシードに袖を通すよりも、
社交生活の税金といったふうに、
ある種のあきらめの心で着るほうが、
大人(たいじん)の風格だと考えられるからでしょう。
つまりタキシードではなく
“タックス”として着こなす。

あえてボウ・タイ(蝶ネクタイ)を
解いたままにしておく、
あえてジーンズを合わせてみる・・・。
タキシードの崩し方については、
およそありとあらゆることが言われてきました。
でも、本当に上手な崩し方は、
さりげなく「私」を表現することです。

古くから家に伝っている着物地を利用して、
ボウ・タイとカマーバンドを作ってみるとか。
あるいはいちばん大切にしている
ウエスタン・ブーツを履くとか。
つまり崩すための崩しではなく、
自分が本当に気に入っているものを、
意図的に組込む。
これが自己表現であり、
上手な着崩し方につながるのです。
その意味ではオペラ・パムプスに
あえて赤い靴下を履くだけでも良いのです。

なにかひとつだけ、
最愛のものを身につけてパーティーにのぞむ。―
そこから自信と勇気が生まれ、
堂々と胸を張った姿勢が生まれるのです。


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