服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第942回
幻のジーンズを発見!

世界に誇る日本製といったら、
何を想像しますか。
知られざる銘品がいろいろありそうですね。
ジーンズもまたそのひとつなのです。
産地は主として岡山から広島にかけてですが、
世界中からの注文が来ています。
ジーンズに対する細かい特殊技術では
郡を抜いているからです。

ところで今から8年前、
ビッグ・ジョンが会社の威信をかけて
「最高のジーンズ」を作ったことがあります。
何をもって最高とするかは難しい。
けれどもビッグ・ジョンの考える
理想のジーンズといったところでしょう。
1997年に、採算を度外視して
300数本だけ生産されました。
いわば幻のジーンズといっても良いでしょう。

まずデニムを織るための
糸づくりからはじめたのだそうです。
もちろん手紡(てつむ)ぎ。
そして本藍染。
天然の藍を使ってひとかせづつ、糸を染めてゆく。
少し極端にいえば、織上ってからも、
1枚1枚、色が微妙に違うのです。
そして織り。
わざわざ古い織機を探して、
27インチ幅の力織機で織る。
効率は悪いのですが、生地の味わいが深い。
穿けば穿くほど、洗えば洗うほど熟成してゆく。
デニム地をカットするのも手仕事。
あらかじめ着用後の脚部のねじれを計算して、裁断。
このために永く穿いても
常にシルエットをまっすぐに保ってくれるのです。
とにかく前開用のカパー・ボタンさえ、
ひとつひとつ手で作ったというのですから、
開いた口がふさがりません。
もちろん1本1本のジーンズに
通し番号が刻印されています。
値段はたしか3万数千円だったはずです。

ところがこの“マイスター・ジーンズ”の在庫を
今も持っている店を発見。
ただし34インチのサイズを1本だけ。
逗子にある「ソルトランドケント」
(TEL:0468-71-5365)というトラッド・ショップ。
このジーンズを入手するか否かはさておき、
今の時代には珍しい、
トラッド商品だけを隠すように並べている店。
一度見学に訪れる価値がありそうです。


←前回記事へ 2005年11月1日(火) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ