服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第944回
スカーフは再会のシンボル

クラヴァットを結んだことがありますか。
クラヴァットが現在のネクタイの元祖であることは、
広く知られている通りです。
もっとも今ではネクタイのことを
“クラヴァット”と呼んでいますし、
イタリアでも“クラヴァッテ”と言います。

昔むかし30年戦争(1618〜1648年)の時、
ルイ13世はクロアチアにも兵を依頼した。
このクロアチア連隊を閲兵する時、
彼らがなにか首に巻いているのに気づいた。
そこで「あれは何か?」と尋ねた。
側近の者あれが首巻とは思わなかったので、
「ははあ、クロアチア人でございます」と答えた。
「そうか、あれはクラヴァットというものか」―
これが“クラヴァット”cravat の
はじまりだと考えられています。

ところでクロアチア人は
なぜ布を首に巻いて出陣したのか。
それは一種のおまじないであった。
愛する人の服装の一部を切り取り、
それを首に巻いておくと、
きっと再会が叶うと信じたからなのです。

それはともかく今でも
クラヴァット風の結び方をすることは可能でしょう。
そもそもクラヴァットとは
一枚の細長い布であり、
これを首に巻いたのですから。
たとえばシルクのスカーフや、
薄手のマフラーでも代用できるでしょう。
スカーフを細長く畳み、
その中心を首の前に置く。
で、一度両側から首に巻いて、
ふたたび前にもどす。
そしてこの両端を蝶結びにして完成。
ちょうどリボン付きの
タートルネックのような感じになるはずです。
スポーツ・シャツの下や、
Vネック・スェーターなどに
組合わせることが出来るでしょう。

もちろん自分の手持ちのスカーフを応用すれば、
それで良いわけです。
けれどもむかしのクロアチア人の信仰を尊重するなら、
愛する人のスカーフを頂く方法もあります。
ただし頂くだけでは申訳ないというのなら、
新しい、美しいスカーフを1枚差上げて、
その代りとして頂く。
それがなによりの再会のおまじないであることを
言い添えて。


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