服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第973回
千の美味さ、万の味わい

ミルフィーユはお好きですか。
これ以上は薄くできないほどの
層を重ねて焼いたお菓子。
まるでそれは
千枚の葉を重ねたよう、というのでしょう。
この場合の「千」は
数えきれないほどたくさんの、という意味なのです。
でも、これに似た表現は日本にもあります。

たとえば「千変万化」といいます。
あるいは「鶴は千年亀は万年」の表現もあるでしょう。
「千本格子」。
これはタテに細い格子が並んでいるものです。
けれどもミルフィーユは食べるものですから、
ほかに何かないでしょうか。
そうです「千枚漬」があります。
京都の名産、ことに冬に食すのが美味い。

聖護院かぶを、もうこれ以上
薄くは切れないほど薄く切るので、千枚漬。
特別なカンナのような道具を使うのだそうです。
まずはじめ軽く塩漬けにする。
その後で水気をすっかり切ってから、漬け込む。
この時、昆布を間にはさんでゆく。
白いかぶに、壬生菜の塩漬けと赤い唐辛子、
見た目にも美しいものです。

千枚漬のはじまりは
慶応元年(1865年)のことと言いますから、古い。
御所の料理人であった大黒屋藤三郎という人物が
工夫して作ったのが最初だと言われています。
また一説にはさらに古く、
大阪に天王寺かぶの麹漬けがあって、
これがヒントになったのであろう、とも言います。

それはともかく
この天王寺かぶに似ていたのが
聖護院かぶで、
今は主として丹波産と近江産とが使われるらしい。
食通に言わせると丹波産はハリがあり、
近江産にはしなやかさがあるとのこと。
さて、京都の考案者、大黒屋藤三郎は
その後に千枚漬の店を出す。
寺町通りの「大藤」。
その後、明治5年に新京極に移って、今もあります。
ですから元祖「大藤」
(TEL:075-221-2455)の千枚漬は
今でも食べることができます。

時に千枚漬はうまいのやらあまいのやら
分らないようなものもありますが、
「大藤」はさっぱりとして何枚でも食べられる。
これで財が千も万もふえることを
願おうではありませんか。


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