門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第132回
MOTOI

京都の街に「凄いフレンチができたらしい」
という話題が駆け巡ったのが今年の早春の頃だ。
「なんと敷地180坪もあるらしい」
「シェフは中華料理からフレンチに転向した料理人らしい」など、
どれも真実であった。

その名は「MOTOI」という。
京都二条富小路下ル。元呉服屋を改装したレストラン。

門を入り玄関までの距離もいい。
室内は2階の床を取りさらい、梁で補強し、吹き抜け状態。
しかも2階の造りまで見渡せる。
中庭があり、奥には蔵、そこでは8席のテーブルが用意される。
なんとも豪華な造りであることか。

シェフは前田元(もとい)さん。
京都リーガロイヤルホテル、日航ホテル東京の中華で
10年ばかり仕事をし、その後渡仏、
帰国後大阪のレストラン「Hajime」のスタッフとして働き、
今年オープンしたのだ。

時代の流れであろう。
昔なら中華料理を10年学んだ後に
フレンチに転向するなど考えも及ばなかった。
しかし、いまは自由闊達なスタイルが評価される。
シェフも「これまで、僕が歩んできた料理人生を、
皿の中に表現出来ればいいと思っています」と姿勢は明解である。


この日の料理には
「豚バラ肉を広東の技法を用いて焼き上げました」
というメニューがあり、
豚の皮に塩の結晶を摺りこんで焼きあげた、
ホントに中華の香りとエッセンスを感じさせる一品であった。


フォアグラナチュールを春の苦みと合わせて、
というメニューではじつに滑らかな火入れで、
しっとりしたフォアグラを味わうことができた。

メニューのタイトルは「旬のコレクション」だ。
アミューズからカフェまで入れて13皿の構成であった。
スッポンのブーダンノワールを作るなど、
随所に実験的なメニューがあり、
食べ手を刺激する十二分なディナーであった。
フレンチや中華など、料理のジャンルにこだわるよりも、
すでにシェフ・前田元さん個人の料理という領域に
入っているのではないかと思う。
楽しい時代に突入した。


【本日の店舗紹介】

「MOTOI」
 京都市中京区富小路二条下ル俵屋町186
 075-231-0709


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2012年5月11日(金)

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