門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第164回
リストランテ ダ ルーポ322

7年前の開店以来ずっと
阿蘇のあか牛を供している「リストランテ ダ ルーポ322」である。
322という数字、
あか牛を322グラムで焼くという意味を持っているからすごい。
この日は、8人で訪れた。
全員食いしん坊で、大食漢揃いだ。
シェフは山羊か羊を用意しようとしてくれていたのだが、
8名のうち初めてこの店を訪れるメンバーも多かったので
「あか牛」をリクエストしておいた。

料理はデザートも含め8品のコース。
コースのみの設定で、
メインの肉類をチョイスできるシステムとなっている。
スタートは徳島の岩ガキからだ。
ミルキーで濃厚な味わいには胃袋が素直に反応する。


つづいてサーブされたのが
淡路島・沼島産ハモ レモンの香り ズッキーニである。

盛り付けがじつに繊細で、ハモの旨みは強い。
それがズッキーニの甘さと素敵な出会いをしている。
ハモの味わいの深さを改めて知る一皿。


イタリア産 ウサギのフリット人参のサラダも見事であった。

ウサギは鶏肉のように優しい。
そこに薄くスライスした人参を合わせる技は見事なものだ。


パスタはジロール茸 ピエブルーのタリオリーニ 夏トリュフ。
トリュフがたっぷりかかる。

その香りとキノコの味わいが喧嘩せずに皿のなかで協調する。


メインの阿蘇あか牛のビステッカは、
まず牛肉を室温に戻しておく。
塊をブロックに分け、炭火で焼いてゆく。
焼き上げたあとは、少し休めるが、
「血の滴る肉を食べてもらいたいのです」
とシェフがメッセージを届けてくれた。


見た感じはじつに豪快だが、
食べると赤身の香りと味わいが鮮烈に広がってゆく。

血の中にそれが凝縮されている。
サシと言われる脂分の旨みではなく、
赤身が持つ噛む味わいの愉しみを満喫したのであった。


炭の組み方、肉類の焼き方だけでも何時間でも話すシェフ。

とにかく料理をすることが大好きという人物の作るメニューに、
また訪れたいと思いながら店をあとにした。


【本日の店舗紹介】

「リストランテ ダ ルーポ322」
 西宮市産所町3-22
 0798-22-9744

◆執筆者から読者の皆様へ

この「一食たりとも無駄にせず 今日感会」は
今日の「リストランテ ダ ルーポ322」をもって終了です。
関西の食から全国の珈琲店まで、僕がすきなように書いてきたコラム。
お付き合いくださり感謝しています。
ありがとうございました。


2012年8月31日(金)更新
- このコラムは火・金発行です -

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8月10日 第158回 博多製麺大河 大阪本店
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門上 武司■門上 武司 (かどかみ・たけし)
フードコラムニスト。1952年大阪生まれ。
関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。国内を旅することも多く、各地の生産者たちとのネットワークも拡がっている。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者をつなぐ役割を果たす存在。




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