門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第133回
十一房珈琲店

銀座には有名な珈琲店が何軒かある。
前から気になっていた
「十一房(じゅういちぼう)珈琲店」に行くことができた。

ここはオールドビーンズを扱うことで知られている。
店内奥には旧いトランペットが飾ってありジャズが流れる。

メニューを開くとヴィンテージコーヒー
という文字が目に飛び込んでくる。
「1995年のコロンビア」とある。
僕がそれを選び、同行者は現在のコロンビアを注文した。
カウンターの中で女性スタッフがネルドリップで淹れている。
さあ、2つのコーヒーカップがやってきた。


左がヴィンテージ、右が現在である。
色艶がやはり異なる。左のほうの輝きが少し鈍い。

さて、味見だ。小さなティースプーンで飲んでみる。最初に右。
そして左。明らかに違う。
右の現在はパンチがあり、コロンビア特有のコクとまろやかさがある。
左のヴィンテージはよりまろやかさが増し、
甘みが強く、アフターも長いのだ。
「これは完全に違いますね」と。
「豆のまま保存しておくのかな」など言葉が飛び交う。
1995年というから17年エイジングされているのだ。
その変化というか味わいの深さには驚いてしまった。

飲み終わり、レジで精算を済まし
「生豆の状態で熟成させるのですか」と尋ねると
「そうです。湿気が一番よくないので、そこには気を使います。
いちばん旧いのは創業の1978年がありますが、
それはほとんど無くなってしまいました」とのことだ。
豆はエイジングすることにより、
余分な水分が出て豆の味わいが強調されることになるのだろう。


「うちは昔ながらのガスを使う小さな焙煎機で焙煎しています。

コンピュータではなく、
全部自分の勘とこれまでのデータの積み重ねなんです」
とも付け加えてくれた。
たしかに焙煎は職人仕事である。
同じ分量でも、水分の含有量は違う。
そうなれば色合いや爆ぜる音で判断するしかないのだ。
人間の持つ力をどこまで出すことが可能か、
そんなことを考えながら「十一房珈琲店」をあとにした。


【本日の店舗紹介】

「十一房珈琲店」
 東京都中央区銀座2-2-19 藤間ビル1階
 03-3564-3176


2012年5月15日(火)更新
- このコラムは火・金発行です -

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4月24日 第127回 LATTEST OMOTESANDO Espresso Bar
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5月01日 第129回 Ital Gabon
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門上 武司■門上 武司 (かどかみ・たけし)
フードコラムニスト。1952年大阪生まれ。
関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。国内を旅することも多く、各地の生産者たちとのネットワークも拡がっている。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者をつなぐ役割を果たす存在。


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