門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第159回
WINDY

京都・京阪五条駅から東山に向かい、
少し歩いたところを南に下がる。
ビルの2階に「WINDY」という
自家焙煎珈琲だけの店と表記されたコーヒー店がある。

随分前から気にはなっていたが、
やや離れた立地なので、行く機会を失っていた。
ようやく休日の午前中に訪れることができた。

階段を上がると店内は結構広い。
カウンターとテーブル席。
大きなスピーカーも目立ち
ビル・エヴァンスのジャズピアノが流れていた。
テーブル席に座ったが、
他に誰もいないので
自然とマスターとことばを交わすようになった。

「もう40年やっています。
自家焙煎にして30年は経ちますね」
「ずっとネルドリップなんですか」
「昔はペーパーが無かったですから。
最近はネルドリップに興味を持たれる方が多くて、
月に結構、うちの手造りのネルドリップが売れるのです」
などコーヒーに関する会話が盛り上がる。

「淹れられるところ写真撮っていいですか」
とカウンターに座ると、
奥様が水の入ったグラスを運んでこられ
「カウンターでどうぞ」ということになった。

さあ、そこからだ。
どんどんコーヒー関連の話題が膨らんでゆく。
ここのネルドリップの淹れ方は特殊。
通常は左手でネルを持ち、
右手でお湯を注ぐが、ここではネルは固定されている。

「いちどに両手を使うのは難しいんです」と微苦笑混じりに話す。


マンデリンを飲んだ。


じつにすっきりとクリアである。
もちろん、マンデリンの持つ苦みや甘みはきちんとあるのだが、
軽やかさが目立つ。いい感じだ。

「世間の流行りには全く関係なく、
自分がこれだと思うやり方をずっと続けてきました。
ぶれることが一番こわいです」と。
ビルの2階で40年間も営みを続けるには、
哲学が必要だということを強く感じた。

奥様が「カウンターに座わると、
いろいろな話題が出てくるので、
つい長居される方が多くなります」と。
それも実感、じつに楽しいカウンターである。




【本日の店舗紹介】

「WINDY」
 京都市東山区本町1-48 本町ビル2F
 075-561-1932

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2012年8月14日(火)

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