第284回
中国の文化遺産の修復事情
昨日から、
遼寧省瀋陽市にある沈陽故宮を観ています。
諸外国から中国を訪れる人々が期待することの一つに、
「昔ながらの中国的な建造物を体感する」という
文化体験があるかと思います。
しかし、いざ中国現地に飛んでみると、
文化大革命などの時代の波を乗り越えた
昔からある中国の文化施設の多くには、
真新しい「修復」の爪あとが多くあることに
嫌でも気付かされることでしょう。
これは世界で最も世界遺産の多い国である
イタリアから来ていた留学生が残した言葉ですが、
「中国の文化遺産は殆どがフェイクだ」
という強烈な感想があります。
彼によると、
「万里の長城や北京の故宮でさえ、
まるで昨日できたばかりのように真新しい箇所がある」
というのです。
文化大革命の折に、
毛沢東がそれまで残された文化的なものを
徹底的に破壊してしまったがために、
中国古来から存在した
世界的にみても大変に貴重な文化遺産の多くが
悲しいほどに損なわれてしまったのでした。
なんとか残った文化遺産の多くにも、
中国流の「適当な修復」が多く目に付きます。
観光客を呼び寄せる装置と化した
中国が誇る文化遺産である万里の長城の一部や
北京の故宮などでも、
真新しい箇所が多く目に付き、
余りに適当な宮細工(中にはただの日雇い民工)の仕事が
中国の文化遺産を台無しにしているのです。
世界遺産に登録されるような文化遺産ならまだしも、
それ以外の文化遺産においては、その修復のレベルは
小中学生の図画工作のようなノリであることも珍しくありません。
その結果として、驚くほどに「その場しのぎ」の
適当な処置しかされていない可哀想な文化遺産が
中国には山とあるのです。
世界遺産である沈陽故宮においても、
ペンキ塗りたてといった感じの修復を
ヤスリを使って少し古く見せようとする処置を目にしました。
こうした適当な修復の仕方では、
出来立てホヤホヤの安っぽい雰囲気は
消すことができないのです。
たとえ世界文化遺産といえども、
現代の中国人による「修復という名の損壊」は、
ある程度覚悟しておいたほうが良いかも知れません。
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