第317回
未来からの留学生
日本で始めてAO入試(Admissions office)を始めた
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて、
キャンパス開設当時使われていたコピーの1つに、
「きみたちは、未来からの留学生」というものがあります。
「きみたちはここで学び、
いずれは本来活躍すべき未来に帰っていくんだよ」
キャンパス創設の父とも言える
加藤寛先生(現・千葉商科大学学長)は、
ことあるごとにこうした熱い想いを話されていました。
私は、中国に留学する日本人に対しても、
このキャッチ・フレーズは当てはまると思います。
しかし、中国留学の場合には、
二義的な意味合いになります。
一つは、上述したように
「いずれ活躍する未来へと帰っていく」という意味合い。
そして、もう一つは
「すでに発展した中国の未来像ともいえる日本からの留学生」
という意味です。
中国は局所的には発展が著しいですが、
発展による歪みや、農村とのギャップ、
社会格差が大変に大きな国です。
13億以上の人々が暮らすこの国において、
裕福な人々は全人口の一握りであり、
大部分の人々の所得水準は日本の数分の一から
数十分の一というレベルにあるのです。
日本と中国とを比べると、
やはり日本はとても発展した国だと感じます。
日本での所得水準は低所得層といえども
中国と比べれば遥かに高く、
市場には品質の良い物が溢れ、
業務のプロセスも比較的しっかりしています。
逆に、中国に渡ってみると、
上海や北京といった都市部でさえ、
日本で当たり前だと思っていたことでさえも
当たり前に享受する事が難しいのだと分かります。
既に発展をしてしまった日本は、
中国がこれから進むべき未来像の一つであり、
日本からの留学生は、そうした意味で
「未来からの留学生」といえるでしょう。
未来(日本)から過去(中国)へと留学してみると、
生活において不便を感じることもままあります。
しかし、急速に未来へと変化していく中国において、
次に何が起こるかということを
未来からの留学生は既に経験しています。
日本人留学生は、
「未来の情報を知っている」というアドバンテージを
留学中・その後の仕事などでも活かしていけるといいですね。
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