産毛とともに消えた毛生え薬への情熱
毛生え薬のインチキさ
ハゲと水虫に効くクスリがあったら、ノーベル賞ものだと昔から言われている。しかし、本当にハゲと水虫に効いたら、ノーベル賞にはならないだろうし、恐らくノーベル賞をもらわなくても、十分に酬いられるであろう。
ノーベル賞はもっと学問的、理論的な発明発見をした人にくれるものだし、ハゲや水虫の特効薬は、それに悩む人たちからいくらでもお金を払ってもらえるから、世俗的なことで酬いられてたちまち世界的な大金持ちになるだろう。
M氏のつくった酵素液で私自身の頭に産毛ながらも毛髪が生えてきたので、私はこれは商売になるぞと直感した。世の中で現に市販されている毛生え薬は山ほどあるが、本当に効くものは残念ながら一つもない。私自身が全部一通り試しているから、自信をもって断言できる。
もう他界してしまったが、加美乃素のオヤジさんは頭がハゲていた。ピップエレキバンの会長のように、でしゃばってテレビのコマーシャルに出てくるわけにはいかない。加美乃素は一時期、よく売れたが、ご本人を知っている人が、
「あなたは毛生え薬を売っているのに、ご自分はハゲているじゃありませんか」
とひやかしたら、
「加美乃素ができるのが遅すぎたから、こういうことになったのですよ。あなたはまだ髪の毛があるんですから、私のようにならないようにしっかり使ってください」
としゃあしゃあと言ってのけた。
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