真偽のほどはわからないが、何でもあるとき、浜松の養殖屋さんが淡水のゴルフ場にゴルフに来た。ゴルフの帰りに急にトイレに行きたくなったので、近隣の農家で便所を借りたところ、便所のすぐ脇の暗がりの中で農家のおかみさんが甕の中から小魚をすくって家鴨に食べさせていた。見ると、どうも鰻のシラスらしいので、びっくりして空罐にその小魚を入れてもらって飛行機に乗せて日本まで持ち帰った。
浜松で調べてもらうとまぎれもない鰻のシラスで、それも日本と全く同じジャポニカという種類のシラスである。シラスといえば、金一升、シラス一升と言われるほどの貴重品で、それを台湾で家鴨の餌にしていることがわかったので、それっとばかりに浜松の人たちが買付けに押しよせた。
何年かそうしたことが続いたが、そのうちに、シラスのまま日本に運ぶより、台湾で成鰻になるまで養殖してから飛行機で運ぶほうが有利なことが判明した。
というのは、鰻は冬になって水温が八度以下に下がると土の中にもぐって冬眠してしまい、その間、餌を食べないので成長がとまってしまう。そのため日本ではシラスから成鰻になるまで二年かかってしまうが、台湾では冬も水温が八度以下に下がることがないから、早いのは一年、遅くとも一年二か月くらいで成鰻に育つ。
日本で一回転する間に二回転するものだから、台湾で育てたほうがよいということになり、最初は浜松と気候風土もよく似た羅東というところが選ばれたが、そのうちに桃園、さらに鹿港と次第に南下し、今では一番南端に近い屏東県が養殖の中心地になっている。同じ台湾でも北と南とでは、鰻の育ち方が半年くらいも違うことが経験的にわかってきたのである。
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