相性の悪い商売
発展途上国で事業を手がける人は、誰でもその土地の産物や素材を扱うことからスタートしようとする。オーストラリアヘ行けば、鉄鉱石、アルミ、羊毛、牛肉のことを頭に浮かべるだろうし、ボルネオやフィリピンなら、材木や水産物の事業化を考える。
ある時期の私もそういう発想から脱け出せないでいたから、豚肉とか養鰻とか牧牛といった事業に手を出した。豚肉に関しては最初から養豚をやらずに豚肉加工だけやったので、いまだに何とかやっているが、一次産業と関係のあるものはすべてといってよいほど失敗をした。また繊維に関係のあるものも損こそすれ、一ぺんもお金を儲けたことがない。どうも生き物と繊維は自分と相性が悪いのではないかとジンクスの一つも信じてしまいたくなってしまう。
しかし、これは私と相性が悪いというよりは、物のあまる時代に共通の現象であろう。
大企業が原料の確保をするために発展途上国で資源開発に大金を投ずることは避けられないプロセスであるとしても、中小以下の零細業者が素材産業を扱ったりしたら、ロクなことにはならないというのが私の結論である。鰻を養うくらいなら、鰻丼を売ったほうがよい、牛を飼うくらいなら、ステーキ屋か、しゃぶしゃぶ亭か、牛めし屋でもやったほうがよいと今の私は堅く信じている。
しかし、こんな単純なリクツをさとるために、何千万円も何億円も授業料を払わなければならなかった。だから、どう考えても利口者とは言えないのではないだろうか。
二十四年間も生まれ故郷から隔絶していると、人は誰でも浦島太郎になってしまう。私は台湾に生まれ、台湾に育ち、台湾語も喋れるので、つい自分は台湾のことはよく知っていると思ったりする。それが言ってみれば私の「躓きの石」で、本当は知らない土地に連れて行かれて、用心しいしい事業を進めたほうが失敗はかえって少ないかもしれないのである。
私は鰻を養殖したり、牛を飼ったり、また既製服や剣道具をつくったりすることで失敗をしたが、それは私にとってはじめての仕事だったからという弁解は成り立つ。それならば、「昔とった杵柄」なら失敗しないかというと、台湾へ帰って株をやったときも、同じように大失敗をやらかしているのだから、弁解の仕様はないのではあるまいか。
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