日本は産油国から石油を輸入する、石油が一バレル当り二ドルから十二ドルに上がる。すると日本製品の原料のコストはその分だけ上がる。しかし、それに加工をしてまた再輸出するのが日本人の商売だし、産油国が日本製品や日本製プラントを買付けようと思えば、その値段に加工賃をプラスした金額を払わなければならなくなる。
産油国はお金をしこたまふところに入れたつもりでも、次の支払いをするときはその分だけ高く支払わなければならないから、言ってみれば、日本という壁に向かってテニスの練習をやっているようなものである。「強く打てば、強く返る」というのが加工業国を支配する経済原則であると私は見たのである。
ただしそうは言っても、石油の値上がりで、加工製品のコストも軒並み高くなった。石油が暴騰しただけでなく、物価が暴騰すると賃金も暴騰するし、一年に賃上げが三五%にも及んだことはまだ私たちの記憶に新しい。このコスト・インフレは日本にだけ起っているわけではないから、韓国や台湾へ引越したからといって片づく問題ではない。
しかし、さしあたりカメラでも腕時計でも、工業製品の売値を値上げすれば、ただでさえ家計費の中でエネルギーへの出費がふえているときだから、売上げがダウンすることは目に見えている。
またニュー・ジャパンと言われている国々も、石油ショックの影響を受けている点では全く同じとしても、人件費などのコストが日本より低ければ、日本から工場がもっと続々と海外に移動して国内が空っぽになってしまう懸念もある。少なくとも昭和四十九年、五十年の時点では、日本の工業界があげてこの二つの恐怖と闘わなければならなかった。
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