アメリカヘ進出

現に私は、日本国内におけるコスト・インフレを見越して、下請工場群の韓国や台湾への移動を主張し、それを実行に移してきた。一時はそれが日本の産業界の大きな流れにもなった。
ところが、石油ショックによってピンチに追い込まれた産業界が、省エネと自動化という二つの奇手を考え出し、その実現に成功したのを見たとき、私は日本が第三国に工場をつくってコスト・ダウンをはかる時代はもうすぎたと直感した。「軽薄短小」は日本商品の国際競争力を抜群のものにしたが、自動化は国内における生産を再び可能にしただけでなく、同時にアメリカに工場を移動することをも可能にしたと見たからである。
少し前までは、自動車の生産工場を一つつくろうと思えば、一万人くらいの従業員を必要とした。しかし、自動化がすすんだことによって、それは二千人程度の従業員で間に合うようになった。しかも人のやりたがらない、労働条件のきびしい作業はほとんどロボットがこなしてしまうから、これまでアメリカの労働組合対策に自信のなかった日本の企業でも、これなら何とかやっていけるのではないかとかなり自信を持つようになってきた。
またアメリカにおけるパーツ・メーカーたちの不良品率に尻込みしてきた日本のメーカーたちも、いざとなれば、傘下のパーツ・メーカーを従業員ごとアメリカに移せばよいと思うようになった。下請けの親方たちも、千人、二千人とアメリカ人を雇傭することには自信がないが、できる限り自動化をして五十人か、八十人くらいですめば語学力の困難くらい克服できるという気になってくる。
したがって貿易摩擦が激しくなればなるほど、日本企業のアメリカ進出はやがて怒濤の勢いになるだろうと私は予言した。さあ、そうなると、自分で乗り出して行ってアメリカのどのあたりに日本の企業が集中するのか、この目でたしかめないと気がすまなくなってくる。
たまたま私にはアメリカに親戚や身内もたくさんいるし、アメリカに行って成功している友人たちもいくらか知っている。そこで女房と二人で毎年のように出かけるようになっただけでなく、しまいにはアメリカ経済視察団を組織して、主として西海岸における投資チャンスの実地見学に何回も出かけるようになった。

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