温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第40回
浴槽の中の温泉

浴室の脱衣所に「温泉分析書」が貼られているのを
ご存じでしょうか?
国に登録された分析機関によって作成された 温泉カルテです。
最近は温泉マニアや温泉通の人が増えているので、
入浴前にチェックする人も多いようです。

まず一番上に依頼者の住所と名前、
次に温泉地名・源泉名および湧出地が記載されています。
依頼者とは源泉の所有者です。
自家源泉を所有している場合は
旅館や施設の経営者の名前であり、
共同所有の場合は代表者の名前となります。

源泉名は源泉の所有者が付けた
固有の名前(○○の湯など)が記載されています。

湧出地とは、源泉が湧き出ている所在地のことですから
依頼者の住所と湧出地の住所を見れば、
その温泉が自家源泉なのか、
それとも共同の源泉を引き湯しているのかが分かります。
また湧出地と使用施設の住所が同じか番地違いであれば、
新鮮な温泉が浴槽まで届いていることになります。

3番目の項目では、調査および試験者の名前、
調査および試験年月日、泉温(湧出時)、湧出量(毎分と湧出形態)、
知覚的試験(温泉の色やにおい)、pH値(酸性・アルカリ性)など、
温泉の状態を知ることができるデータが記載されています。

しかし以上のデータは、すべて湧出地でのことです。
これから入る浴槽の中の温泉が
必ずしも、温泉分析書の通りだとは限りません。

そこで手がかりとなるのが、
別に掲示されている「温泉利用状況」です。
これには「加水の状況」「加温の状況」「循環・ろ過状況」
「入浴剤の有無」「消毒剤の有無」が記載されていて、
実際に使用されている
浴槽内の温泉の状態を知ることができます。

しかし残念なことに、加水による希釈の割合や
消毒剤の量などの明記はありません。

「スポイト温泉」という言葉があります。
水道水に源泉をスポイトで一滴でも入れれば、
温泉法上は温泉になってしまうという意味で使われる、
ザル法を指摘した言葉です。

より利用者に分かりやすい表示が義務づけられることを、
温泉ファンとして切に望みます。


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2012年4月14日(土)

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