前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第60回
まあいいか − 開腹手術編

日本にいた頃から調子の悪かった十二指潰瘍が度々再発するので
手術を受けたことがあります。
今年の9月の新聞によると、私が世話になったこの病院が、
食事のルーム・サービスを
7時から20時まですることになったそうです。
食欲の出た時にアラカルトのメニューから選んで
電話で注文できるのです。
その上公立病院ですから生活費がいらないので、
入院している間に貯金通帳にお金も増えるのです。
私は手術するのが早すぎました。
もっとも今では十二指腸潰瘍は薬で治るようですが。

入院すると基本的には身の回りの事は全部自分でやります。
パジャマや下着は廊下に置いてある棚から適宜に取って
自分で着替えます。
手術の数日前にお医者さんが私のベッドにやって来ました。
穏やかな肉屋さんか車の修理工といった雰囲気です。
「私があなたの手術の担当医のXXです。よろしく」
握手して私は一瞬怯みましました。
物凄く太い指で、野球のグローブをはめたような手です。
これではよほど大きくお腹を切り開かないと
指が入っていかないではないですか。
手術の前から後まで色々細かい点まで
「どうして、どうなるか」手順を丁寧に説明してくれました。
後で看護婦さんが「あの先生は手術が上手だから」と
安心させてくれました。
まあ、仕事は職人気質で
キチンとやってもらえそうな雰囲気ではありました。

肺から吸い込むタイプの麻酔をかけて朝から手術が始まりました。
目が覚めると麻酔が効き過ぎたらしくて、
予定より大分時間が経っていて外は薄暗くなっていました。
鼻は勿論、手の甲やお腹には細いチューブが差し込んでありました。
お腹をみると「への字型」にとても大きな切り傷があって、
テニスのラケットのガットのような
極太糸で縫い合わせてありました。
それはそれは下手糞な真っ黒な糸の縫い目でした。
私の病気は胃酸の酸度が高過ぎるのが原因とかで、
胃酸を出す神経を減らすということでした。
胃や腸は切らないので
少しだけの開腹で済むのかと思っていましたが甘かったです。
その縫い目は
最後の所で片側の肉と皮が余って盛り上がっていますが、
そこを無理やり辻褄を合わせているのでした。
お腹の肉の盛り上がりは傷が治った後も
服と擦れて痛痒くて困りました。
裁縫なんか一度もしたことが無いインターンあたりが縫って
「閉じたんだから、まあいいか」
ということになったんだと思います。
私はそれまで体が弱くて、
例えば夜の12時を過ぎまで起きていると必ず風邪をひくのでした。
それがこの手術の後で徹夜しても大丈夫な体に変わりました。
だから“まあいいか”。


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2004年10月8日(金)

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