前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第80回
待つことを知っている人だけが

デンマーク人のやっている寿司屋は
私達が食べても美味しくないのが普通ですが、
店のセンスには大変感心してしまいます。
ある半地下の店は箸置きに小石を使っているのですが、
黒っぽい色に白い筋が入った色合いに黒い箸が乗っています。
ランチョン・マットと
白木のテーブルとのシンプルな組み合わせで、
開店前から道を通る人の目を楽しませてくれます。
看板は赤と黒の菱形の皿に箸が乗ったロゴですが、
その箸が中ほどで曲がっているのが
私達には思い付かないデザインです。
ひとつひとつの窓に小さな盆栽を並べて人目を引く店もあります。
その窓から覗くとモダンな内装に渋い小皿を箸置きにして、
お客さんを待つテーブルその物が
ディスプレーに使われています。

レストランで注文すると、
いつ食べても延びた饂飩のようだった
情けないデンマークのスパゲティにも腰が出てきました。
春巻きは以前から定着しているし、
そろそろ色々な国の食べ物が
デンマークでも受け入れられそうな感じではありました。
そこで、以前に私の知り合いの日本人が、
餃子と生ラーメンの工場を開いて、
レストランやスーパーに卸したことがありました。
春巻きの創成期は人海戦術でしたが、
餃子とラーメンはコンピューターを使った
少人数で大量生産できる工場でした。
でもこれは失敗に終ってスーパーから餃子は姿を消しました。

もう一人の私の友人は餃子を作って中華レストランに卸しました。
青果市場に閉まる直前に行って、
捨てる野菜をただで貰ってきて手仕事で作ったのです。
彼は貧しい西アフリカを旅行した時にも、
地元の人から食べ物を恵んでもらったぐらいだから、
ただでもらう才能があるようです。
それぐらいから始めてずっと続けることが出来れば、
餃子もいつかは
デンマーク人も食べるようになったのかもしれません。
今では成功した春巻きにも、
食べ物に保守的だったデンマーク人相手では、
どうなることか分からない長い長い期間があったのでした。
デンマーク人はファースト・フードとして食べることを覚えて、
春巻きは少しずつ広まっていきました。
「春巻き」という名は「長い冬が終って春」という
明るいイメージも幸いしたかと思います。
たとえデンマーク人の口に合うはずだと信じていても、
新しい食べ物は広まるまで待つ事が出来ないと難しいのです。
寿司屋も15年前に日本人が初めてオープンしましたが、
早すぎたので我慢できなくなって店を閉めました。
それから数年後に寿司ブームがゆっくりと始まりました。


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2004年11月5日(金)

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