前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第133回
横取りされる給料

写真屋でミニラボの係だったという、
打ってつけの人が、履歴書を添えて応募してきました。
ヘンリックという三十台の男性でした。
面接しましたが、どういう人か判断がつきませんでした。
なぜ前の店を辞めたのかも気になったので、
前に勤めていた店に電話をしてみると、
店のオーナーが出てきました。
そして「時間通りに来ないこともあるが、働くことは働く」
「本人も自覚が出来たかもしれないし、
試しに使ってみてから決めればいいのではないか?」と、
一見フェアな意見を頂きました。

試験期間中のヘンリックは、何だか動作が緩慢で話好きでした。
仕事をとりあえず後回しにして、ムリエルとお喋りです。
そのムリエルに語ったところによると
“前の店のオーナーが店を売って新しいオーナーに代った。
何も知らない新オーナーに、
1ヶ月の間ミニラボを教えてあげたところでクビになった“
ということでした。

通例の3ヶ月のテスト期間にして、働き始めてから2日目に、
ヘンリックと同じぐらいの年齢の男が店に現れました。
「いつ返してくれるんだい?」
「始めたばかりでまだお金は無いよ」
なんて会話をしています。
“これは店を任せるのは無理だ”と判断したので、
1週間のテストで辞めてもらいました。
表向きの理由は、3番目ぐらいに重要な
「あなたはスピードが遅い。速くなるとも思えない」でした。
何年もミニラボに勤めていたにしては、
接着テープの貼り方もフィルムの扱いも遅かったのです。
とりあえず仕事を残しておいて、
誰かに見られても“仕事の途中です”という雰囲気を作っておく、
という小細工も目に付きました。
店には仕事はたくさん来るので、
そんなことをしていると、毎日残業するはめになります。
真面目で金銭感覚がしっかりしていたら、
遅いとかその他のことは目をつぶれるのですが・・・。

ヘンリックが辞めて半年も経ってから税務署から電話がきました。
「そちらで働いているヘンリックという人の給料は、
税務署の管理になりました。
これからは全額こちらの税務署に回すようにしてください」


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2005年1月18日(火)

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