前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第142回
身も蓋も見せます

昔ユースホステルに泊まり、部屋に座る場所がなかったので、
二段のベッドの下のベッドに座って話をしていました。
そこへ若いイギリス人がやって来て
「そこは私のベッドです!」と厳しく注意されました。
私が謝まって“彼の”ベッドから立あがると
彼は「サンキュー!」と、こちらに押し付けるような口調で、
そう言いました。
その時は“細かいなあ”と思いましたが、
勿論借りている間は契約で借主に権利があるのだから、
座っている私が悪いのです。
イギリスの青年はその権利の意識が私達よりかなり強いのでした。

私達日本人は、ちょっと借りているだけの賃貸契約では、
そんなに「自分の物」という感じはおこりません。
日本人でも女性は、
自分の寝るベッドに腰掛けられたら嫌かもしれませんね。
デンマーク人は、女性でも男性でも、
その種の細かいことはどうでも良いほうなので、
いいかげんな私には馴染みやすいです。
「座る所が無いならまあいいじゃないか。野暮なこというなよ」
とは、口に出しませんが、そういう感じがあります。
色々な国の人が集まる所では、
自分のやり方で通すと色々摩擦がおきますが、
それは仕方ないとして、それをどう考えるかです。
何も考えずに、相手を“おかしな奴だ”と、して済まさずに、
文化の違いを考えれば相手にも親近感が持てます。
そうでなくても、とりあえず
“人の物と自分の物”にこだわる人もいるのですから、
「所有」と「契約」の感覚はできた方が良いです。

身も蓋も無いのも、デンマーク人の特徴で私が気に入っています。
デンマーク人に言わせれば
「身が無いのに蓋で隠して、有る振りをするとはおかしいよ」
「身があるなら蓋で隠さずに、見せるべきだよ」
と、いう感じになります。
隠さずということでは、
自分の病気も、自分の怒りも悲しみも隠しません。
学校の成績も隠さないし、
病気で死にかかった人がテレビに出演して、
近づく自分の死を隠さず語ります。
勿論、顔を隠したりぼかしたり
(久しぶりの日本のテレビで、
重病人の顔にぼかしが入っていてビックリ)
名前を伏せたりしません。
その後で「この録画の1週間後に亡くなりました」などという、
ショッキングなナレーションが入ります。
深刻な場合は、さすがに公には話したくない人も多いのでしょうが。
付け加えると、自慢し過ぎると嫌がられる場合もあるので、
自分だけに良いことは隠すこともあるようです。


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2005年1月31日(月)

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