前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第149回
出だし好調、上海人が好き

去年の春に初めて上海に行きました。
コペンハーゲンの中国人の旅行会社で、ホテルの予約をしました。
河のそばの安いホテルに着いてみると、
フロントの若い女性達は、
日本語は勿論、英語も誰一人分かりませんでした。
宿泊料はデンマークですでに払ってあったのですが、
それを知らないようで
「宿泊料を払ってください」と言っているようです。
お互いによく分らないので途方にくれましたが、
結局コペンハーゲンの旅行会社に電話を繋いで、
説明をしてもらいました。
それで何とか意思が通じ合いましたが、
それからも3回も電話で通訳をしてもらうことになりました。

さて、部屋を見せて行ってもらうと、
旅行会社との約束と違ってバスタブが有りません。
バスタブの絵を描いてそのことを伝えると、
若いフロントの女性はすぐに理解して、
別の部屋を見せてくれました。
見ると、どの部屋もシャワーが付いているだけなのでした。
この時、彼女は困った顔はしましたが、
眉根に皺ひとつを寄せることなく、
真摯にクレームを理解して解決しようとしてくれました
中国のほかの町では不快そうな眉根の皺を良く目にしたのですが。
「上海人みたいじゃないね」というのが
上海人にたいするほめ言葉だ、などと聞いて、
上海の空港に着くと緊張した私達でした。

ところがこのホテルでは、他の従業員も皆さん親切なのでした。
この時は北京まで往復して、また上海の同じホテルに戻りました。
タクシー乗り場は気が遠くなるほど混んでいて、
飛行場から地下鉄の駅までは近くてバスの方が早そうなので、
バスに乗るにしました。
その地下鉄の駅名を紙に書いてバスの車掌に見せると、
散切頭の小さな女性の車掌さんはニコニコして
「行く行く」と頷きます。
バスが走り出すと、彼女は新しく乗ってきた人から、
すばやくお代をもらって切符を渡します。
バスはそのうちに、満員になってビッシリ詰まりました。
乗降客のコントロールも大変かと思いましたが、
この車掌さんは記憶力抜群で仕事振りに余裕があります。
大きな乗客の肩越しに、
新しい乗客に素早く正確に切符を売る姿は、
仕事に対する誇りが溢れていて好ましいです。

バスはそのうちに、見覚えのある道から迂回して、
見知らぬ通りに入り、
出発から1時間近くも走ってもまだ着きません。
私達は心配になってきたので、
ボタンを押してとりあえずバスから降りようとしました。
しかし車掌さんは、忙しいにもかかわらずちゃんと覚えていて
“違う、違う”という感じで私達を強く制しました。
そういうやりとりが2つのバス停であり
「仕方がない、いくとこまでいくか。
せっかく親切に教えてくれているのだから」と、
またしばらくバスに乗っていました。
ついに“着いた”と教えてもらったのはなんと別の駅でした。
考えてみたら、またしても私の間違いで、
駅名を間違えて車掌さんに見せていたのでした。
幸いその駅からは10分でホテルに近い駅まで行けました。
ホテルの女性に北京のお菓子をお土産に渡したら、
喜びに頬を赤くして、同僚のいる控え室に駆け込んでくれました。
チェックアウトの時は、国際電話の料金は請求されませんでした。

私達は上海に行って、読み聞きするのとは違う上海を知りました。
あるいは今回は、
地方から来た人達ばかりと出会ったのかもしれませんが、
この人達のおかげで上海は暮らしてみたい町になりました。


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2005年2月9日(水)

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