前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第163回
中国の田舎の人、何も知らないね

ある日、初めてやって来た東洋人のお客さんが、
私が日本人と分ると、
ニコニコしながら1枚の新聞写真を見せてくれました。
戦車をバックに人がたくさんいます。
テレビで何度も流れた天安門事件の場面でした。
言われてやっと分りましたが、現場にその人が映っていました。
彼は「私はこれで逃げ出したのです」と、言って、
「日本に亡命しましたが、日本では大変親切にしてもらいました」
と続けました。
その写真を見たら誰でもたいてい、
出来れば何かしてあげなければ悪いような気持ちになります。
私が「あの事件で中国も少し変わりますね」と言ったら
彼は「田舎の人、何も知らないね」と日本語の返事でした。

「中国の大盗賊」という本によると、
中国で野にあって天下を狙う人は、
強盗の親玉が出世した者、ということになります。
盗賊団が、
たいして獲物も無い零細農民からの略奪を途中から禁止して、
金持ちから奪って少しだけ貧乏人に分け与える。
すると人民は略奪されないだけでもありがたいので、人気は上がる。
ロビン・フッドみたいです。
そして、正義の軍だと宣伝して天下を狙うのが常道だそうです。
圧制者はもっともなことを必ず言いますが、
確かに「私は圧制を行い、好きなようにやる」
と、言うわけはないです。
それで、論語やキリスト教を持ち出したり、
共産主義を持ち出したりするのも、
伝統に則った戦略の一部だということです。

どの国でも、国の始まりはどうも盗賊に縁があるようではあります。
アジアに限らずヨーロッパの強い国の指導者も、
その昔、強盗、泥棒を奨励してきました。
現代では、アラファトも国の財産をたくさん隠していましたが、
もう一歩で一国の長になれるところでした。

しかし、創業する力は有っても、
その後に国を維持して発展させるのは別の才能なので、
その能力の無い創業者が居残ると大変です。
毛さんの文化大革命はムチャでしたが、
そういう過程を経ても、ケ小平のような人が出れば、
その後の大きな発展があります。
ケ小平もよく“煮られず”に生き残りましたが、
天安門では昔の荒仕事の片鱗を見せてしまった、
ということになるのですか。
しかし、自分のことを考えても、
悪い事を考える時もあれば、善いことを考える時もあります。
それに、良いつもりで酷い事になることもいくらでもあります。
私達だって発達途上国で権力を持ったら、
何を始めるか分ったものではありません。


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2005年3月1日(火)

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