前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第164回
毛沢東の額の黒子

去年の夏、中国投資視察団に参加して、
バスに乗って久しぶりに北京市内を見物しました

思い出すと、私達が初めて北京に行ったのは10数年前になります。
その時、市内観光の前に、
デンマークの旅行会社のガイドが言いました。
「天安門には毛沢東の大きな肖像画があります。
そして彼の額の真ん中に“ほくろ”が描いてあります。
中国では、額に“ほくろ”があるのは天下をとって皇帝になる相、
ということになっているのです。
中国の民衆は毛沢東を皇帝と思っているので、
彼の額に“ほくろ”があるのは期待にそむきません。
さて、この肖像画は定期的に塗りなおされるのですが、
その度に“ほくろ”が大きくなっていくのです。
よくご覧ください。」

私はその頃は、中国では、
毛沢東はマルクスの理論を実践した革命家として
尊敬されているのだ、と思っていました。
だから、中国の国民がそういう認識だというのは私には意外で、
おかしな感じでした。
このガイドの説明も、
共産主義の意味も分らない「土着の民の心」の現われ、
という意味合だったと思います。
しかし、自分の国の事は外国人よりも、
その国の人の方がよく知っているのは、まあ多分、当然でした。
いくら共産主義で洗脳されて締め付けられて、
表面では従っても、
民衆は自分で感じ取った思った通りの本音をもっているのでした。
「中国の大盗賊」という本によると
「毛沢東もイデオロギーの名を借りているが、
内容は伝統通りに天下をとっただけ」
ということになります。
中国の人々も自分達でそのことを見極め、
当然のようにそのように考えていたのかと思います。

視察団のバスは天安門広場で停車して、皆で下りました。
頼りない顔をした大男の地元の写真屋さんが、
記念写真を撮ってくれるというので、
毛沢東の絵を背に皆で整列しました。
後で連絡があって、写真は結局撮れていなかったそうです。
写真の注文が非常に少なかったので、
算盤に合あわなかったのかもしれませんが。

撮影が終った後で、私はもう一度よく絵を見てみました。
よく見ても、やっぱり私の目には、
毛沢東の額には、もう“ほくろ”は見えませんでした。


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2005年3月2日(水)

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