前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第199回
転業の勧め―お寿司屋さん

私の店にはチュンというカンボジア人が働いていました。
チュンはすぐにワイワイ騒ぐところがあります。
私の店に入る直前に結婚したのですが、
子供の出来たばかりの2年目のある日、興奮して店にやってきて
「ヒロお金を貸してください。離婚してアパートを出るから」
と、いきなり切り出しました。
目が据わりハーハー息をしています。
チュンの奥さんが
「お母さんや、私が大変世話になった姉の息子をないがしろにする」
と、いうのでチュンは怒ったのです。
良く聞くと、チュンのお母さんと甥が同居しているのが原因で、
奥さんが度々ヒステリーを起こしているのでした。
その時はチュンが落ち着くのを待って、一緒に解決しました。

店に慣れてくると、独立したいチュンは焦っていました。
カンボジアの姉さんには発破をかけられるし、
同年代の仲間の何人かは、すでに起業して成功しているのでした。
そこで、3年前に郊外の店舗を見つけて
「写真屋を開く」と言い出しました。
私は、今更写真屋をやっても遅すぎると思いましたが、
またチュンはワイワイ状態です。
これは私が止めても聞かないでしょう。
そこで私は“仕事を廻すなどして互いに協力をする”
と、いう約束をして、チュンは円満退社となりました。
しかし、その物件は、私の店とほぼ同じくらいの広さで、
立地は遥かに悪いのに、家賃は少し高いのでした。
しかも、チュンと弁護士の見落としで、変則的な契約で、
暖房費が私の店の5倍になるのに後に気づきました。

それから3年目になる今年の初めに、
チュンは「寿司屋を開くから名前をつけてください」
と、電話してきました。
やっぱり、写真屋はもうダメなので、
儲かりそうな仕事を家族が協力して始めることにしたのでした。
「皆で仲良く」又は「幸せ」という日本語で、
店の名に使えるのは無いか、ということでした。
それで私がムリエルに「幸寿司」という音の響きはどうか、
と尋ねると、非常によろしい、と言います。
「サッチー・スッシー(Sachi・Sushi)は、
世界的な広告会社の名前にも似ています」ということです。
いかにもモダンな「日本のもの」という響きがあるそうです。
後でチュンが調べたところでは、
アメリカではこの「サッチー」の店名は人気があって、
沢山あるのだそうです。
それで店の名前は決まりました。


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2005年4月20日(水)

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