前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第212回
日本悪役番組

デンマークのテレビでは、
今回の日中問題は、合計すると驚くほどの長時間が割かれました。
デンマークのマスメディアの窓口から見ていると、
中国では、いかにも激しい反日運動が起こっているような印象です。
しかし、10万人とか言われる上海の反日デモも、
実際は大分様子が違うようですね。

デンマークのテレビ番組の一つは、
今回は「日本悪役」の編集方針に決めたようでした。
受け取る側にはすでに出来上がっている像があります。
それに合わせて簡単に編集するマスコミの弊害は、
日本や中国だけではありません。
戦時中の米国で創ったプロパガンダ映画らしきものが、
番組の初めに流れました。
説明がないので、不自然なその画面も記録映画に見えたと思います。
その後で「知日家」と字幕が出て、
若い女性の大学講師が日本の教科書を手にして、
記者の細かい質問に答えます。
「何々は載っていますか?何々は?」
“知日家”はにっこりと笑って「いいえ、ありません」。
質問の内容は中国政府の主張そのままです。
それで
「(総ての)日本の教科書には、
戦争犯罪のディティールが抜けている」
という“結論”が出て、番組は終わりました。

それにしても、宣伝戦の世界は、
やはり中国が圧倒的にリードしているようです。
教科書問題や、死者の数その他の詳細も、
中国の主張が、デンマークでは常識になった感があります。
日本が侵略したことが悪いという前提は当然ですが、
反日デモも
「中国が怒るのももっともで、原因は100%日本にある」
と、中国政府が聞いたら泣いて喜ぶような番組でした。

部外者の知識は、本当のところ「侵略戦争があった」で充分で、
損害の規模などは“細かい”ことで、 興味が薄いのです。
日本の侵略戦争そのものも「よその国の昔の話」で
「世界でおきた、たくさんの戦争のひとつ」程度の感じです。
それで、今度の中国に限らず、
当事国の一方だけが情報を大声で流し続けていれば、
そのうちに、それが世界の常識になるようです。

詳細は中国の主張が常識となりましたが、
同じテレビ局でも、
「日本悪者説」とは正反対の視点の番組も放映しています。
一般には、デンマークのマスメディアの見解は色々で面白く、
学べることも多いのです。


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2005年5月9日(月)

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