前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第242回
返して来い・EUケチクラブ

昔、私達の訪れたオランダは寛容な国に見えました。
警官も感じが良くて、
いつでも軽い気持ちで道を尋ねることができました。
アムステルダムの体育館のようなスリープ・インの受付では、
量り売りで大麻を売っていたそうです。
肌の色の濃い人も、汚いバックパッカーも、得体の知れない人達も、
人目を気にしないで歩けました。
タバコを「借してくれ」と、
通りがかりの若者が、別の見知らぬ若者に声をかけていました。
タバコを請われた方も、
1本のタバコで一期一会を楽しんでいるような、
そういう雰囲気がありました。
そこで私達は、
オランダ人そのものが
「鷹揚で寛大なのだ」という印象を持ちました。

旅行者である私達の目に映ったのは、
そういったオランダの姿でしたが、
住んでみると、またまったく違う面が見えてくるようです。
と、いうより、
「成る程、旅行者などにはなにも分からないものだなあ」
と、いうことになります。

それから大分後になりますが、
今はデンマークに住んでいる私達の友人が、
オランダで勉強していました。
ある日、友人が教授の家によばれて、
学校の帰りに教授と一緒に彼の家に向かいました。
その時、教授はパン屋に寄って、
奥さんに頼まれたらしいパンを買いました。
教受宅に入ると、その包み紙を一目見た奥さんが
「どこから買ってきましたか?」と尋ねました。
そして、それがいつもの安い店のものでないことを確認すると、
奥さんは教授に、すぐにパンを返してくるように命じました。
そして、いつもの安い店で買って来てください、と言うのでした。

生徒の前で教授に命令し、ケチ振りを披露する感覚に、
友人は度肝を抜かれました。
いや「ケチ」という日本語のマイナスな響きはそこにはありません。
「経済観念」という
(崇高な)抽象概念・知恵の輝きが存在するのみなのでした。

と言うよりは、
まあ、奥さんの気がすまなかったということでしょうが、
奥さんの気分が、家庭内ではたいしたことなのです。
ヨーロッパでも南からオランダあたりまでは、
マッチョがけっこう幅をきかせているのですが、
それでいてこうなのです。

オランダに代表してもらうのも何ですが、
一般にヨーロッパ人は、
「世界浪費クラブ」会員の日本人の目から見るとケチに見えます。
浪費は知恵を使っていない消費でしょうが、
ケチは経済観念という知恵を絞っても、
目先の経済性にこだわったものでしょうか。
EUでは、住居の模様替え、といった
消費などに頻繁にお金を使いますから
「財布を開くところが違うだけ」とも言えますが。


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2005年6月20日(月)

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