前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第273回
血の代わりの駱駝

ディスコティックの入り口の警備員が、
数人の若者に取り囲まれて暴行を受けました。
若者たちはディスコティックの中で麻薬を売ったり、
乱暴の常習犯だったりしたのですが、
入店を拒否されて怒ったのです。
身の危険を感じたドアマンは、
不法所持のピストルを発砲して1人が死にました。
警備員は回教徒でした。
死んだ若者も回教徒で、2世でした。
こうなると、デンマークの法律の裁きとは別に、
回教徒の家族同士の血で血を洗う復讐戦が懸念されるのでした。

そこで、コペンハーゲンに住む回教の宗教的指導者は、
自国の慣習によって、これを裁くことを提案しました。
それは「加害者は400万円支払う」という裁定でした。
昔から、償いとして駱駝200頭を
息子を殺された家族におくると決められていて、
駱駝1頭は2万円弱するのでした。
殺された家族は殺した家族より、ランクが高いので、
そういうことになるのだそうです。

強姦などにも相場があるそうで、
新聞の「まあ、だいたいやな」というコラムでは
「それでは昔は駱駝不足になったのではないか?」
と混ぜ返しています。
続けて「不足したら同じ貨幣で返すこともできます。
つまり強姦した男の姉妹を強姦すればよろしい。
そうやって同じ駱駝が何回も使えます」
と、悪乗りして批判しています。
駱駝の「花見酒の経済」です。

この回教徒指導者の提案を「名案」という言う、
のんきなデンマーク人の大学教授や政治家もいました。
しかし、やはり「それでは欧州は暗黒の中世に逆戻りだ」と、
強く反対する人の方が圧倒的です。

イランからの亡命者で回教徒の、デンマークの大学教授は
「代わりにやってもらえないのが信仰であり、
代行してもらえるのが政治です」
と語っています。

「司法、立法、行政その他なんでも、政治は代理人で出来ます。
しかし、神とか主義とか、
その他の何かを信じることは自分ですることで、
誰かに代わりに信じてもらうことは出来ないでしょう?
この二つを混ぜると、近代民主主義国家はなりたちません。
コーランや聖書通りに政治や刑罰を行なっては、
民主主義国家はなりたちません。」
と、明快に語っています。


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2005年8月2日(火)

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