前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第285回
あまりくっつかないで

日本からコペンハーゲンに初めて着いたお客さんは、
一様に、飛行場から街に向かう通りに、
人がいないことに驚いています。
平方メートルあたりの人口はかなり多いのですが、
ほとんどが平地なので、
通りも家の庭の広さも多少余裕をとることができます。
それと、国民性の違いで、
狭かろうが広かろうが隣同士くっついて家を建てる日本から来ると、
閑散としてわびしく見えるようです。

中国の街も相当混み合っています。
先日、上海駐在のデンマーク人女性記者の
「30cmのプライベートな空間を、サンキュー・・・」
という題の新聞の記事がありました。
列に並んでいると、後ろからくっかれるのが嫌なのだそうです。
フィットネス・クラブで
すっ裸で自分のロッカーの前に立っていたら、
肩と腰に濡れて熱い物が触ったそうです。
見ると隣のロッカーの人が、
濡れた身体で平気でくっ付いてきていました。
「たいていの国では、お互いに少し場所を譲るところですが」
と、彼女は言います。

「原因は人口が多いことだけではなくて、
中国の集団文化、または公開主義です」
と彼女は分析します。
多くの世代が一緒に住んできた大家族制と共産主義が、
中国人にそのような接触を自然と感じさせる、という意見です。

「銀行で並んで待っていると、
銀行員は大きな声で通帳の残高を読み上げます。
新興成金以外の人では、
皆に聞かれるのを楽しむ人はいないと思うのですが」

彼女はこれは、文化大革命の後遺症だとしています。

「話をする時は、皆に聞こえるように
はっきりと大きな声で話すよう指示されて、
ささやき声の会話をした人は罰せられました。
未だにその頃の指示から開放されない銀行があるのは
信じられない事です」

そして彼女は
「私が美術館で絵に顔をくっつけるようにして眺めていると、
絵と私の間に中国人が割り込んできます。
地元の人には、充分に間が開いているように見えるようです。
せめて30cmのプライベート・ライフが欲しいのですが・・・」
と、結んでいました。

デンマーク人の友人は
「列をつくるとドイツ人もくっついてくる」と、言っていました。
どれくらいを「くっついている」と言うのかは分りませんが。


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2005年8月18日(木)

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