前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第316回
光り輝く秋の日に・最終回

晴れた日の北欧は本当に気持ちが良いです。
うちの近所の
「黒いダイヤモンド」の名で呼ばれる建物のガラスの壁は、
運河の波を反射して眩しくきらめいています。
空気は澄んで乾いているので、
景色は遠くまでくっきりと輪郭を保って輝いています。

今年は世界のクォリティ誌で「世界でもっともホットな街」と、
取り上げられたコペンハーゲンです。
古い広場や古い建物と、新しいものとの調和はとれています。
電車はしょっちゅう遅れますがデザインに優れ、
見栄えだけはよろしいです。

税金が高く、
社会主義にもっとも近い資本主義の国だったデンマークも、
国民の意識は転機を迎えているかもしれません。
先週は女性の社会大臣が
「経済が伸びる時代に収入の格差が開くのは構いません」
と、トウ小平みたいなことを言って、首相からしかられていました。
これを受けた2大新聞社の1つも
「社会大臣の意見はもっともだと思う」
と、ニュースにコメントを添えていました。

デンマークを特徴付けていた、安全な街や人の優しさは、
今、国際化の荒波に挑戦をうけています。
私がユトランド半島の国民学校の寮にいた頃の、
あの天国は今はありません。
若い人の公共意識は変わり、
休日の後、朝の街にゴミは散らかりほうだいです。
デンマークの人々を特徴付けていた、
オープンな心も陰りが出てきています。
アラブ系の2世の心はあまりにも荒くて、
敢然と立ち向かって注意をするおばさんも少なくなりました。

良いことも悪いことも世界中が直接影響しあう時代になりました。
と、言うよりも垣根が低くなり、
良い人もそうでない人も、
人が国を選ぶ時代になったのを感じることができます。

「現実という枠の中の理想の社会」と、
クリントンは持ち上げました。
それ程でもなくなったデンマークですが、
それでも私は、
これからもこの国を選んで本拠地にしていきたいと思っています。

これで私のコラムは終わり、お別れになります。
約1年の間お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。


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2005年10月14日(金)

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