死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第12回
仲人と司会者は誰に

以上のようなわけで、息子の結婚式ではあるが、
親としてはそれなりの意見がある。
しかも花婿なら花婿側だけで一方的にきめられないことだから、
結婚式に対して相手側がどういう考えを持っているか
確かめる必要もある。

幸い、息子の結婚相手側は、
結婚式は東京でやっていただければよいし、
仲人を誰にしていただくか、
結婚の日取りをいつにするかについては、
こちらの意見に従うという。

私は結婚式は、さきにもふれたように、
お金をたくさんかけて豪華にやった方がよいという意見では
必ずしもないが、
省略して簡単にすましてしまえばよいという意見では決してない。

できれば本人にとって一生に一度の
華やいだパーティであって欲しいし、
一回だけ行われて、生涯忘れられず、
しかも参加した人々のすべてがいい演出だったと
感心してくれるような檜舞台であって欲しいと思う。

なかでも、仲人と司会者を誰にお願いするかは、
いい加減にきめるわけには行かない。
というのは、仲人は生涯にわたって
本人たちが相談にのってもらえる人がよいし、
当日の司会者は、学友に頼んだり
テレビのアナウンサーに頼んだりしている人が多いが、
学友ではとてもさばききれないスケールであることは
初めからわかっているし、
一方、テレビの司会者では私がどうしても納得できない。

皆さんもご承知のようにテレビの司会者は、
パーティなれしているから物おじしないのはよいが、
その代わり時間つなぎのために
無意味なことをやたら口走る癖がある。

毒にも薬にもならないことを言いすぎて、
テレビの視聴者から愛想をつかされ、
遂に竹村健一のような「威張り屋さん」に
職場を奪われてしまったくらいだから、
またそういう人にお願いしては、
座がしらけてしまうおそれがある。

もちろん、テレビの司会者たちは私の名前くらいは
知っているからお世辞の一つも言ってくれるかもしれないが、
花婿花嫁と当日の招待客との
微妙な関係を理解してくれるとはとても思えない。

テレビ番組のように流れ作業的に料理されては
たまらないと思うのである。





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2012年12月3日(月)

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