死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第28回
かさ張るだけの引出物

さて、結婚披露の演出をする前に、
もう一つ頭を痛めさせられるのは、引出物を何にするか、
ということであろう。

結婚披露の引出物は、大抵、大きな袋に入っていて、
かさ張るものが多く、家へ持って帰るだけでも大変だが、
家へ帰ってひらいてみて、
「何と気のきかないものをくれるんだろうな」
と改めて腹が立つようなものが多い。

先ず第一に、あんなかさ張るものを持たされては
遠くから来た人は有難迷惑である。
私などは、一応なかを確かめてから、
大したものでなければ誰かにあげてしまう。
あげる人がない場合は、
ホテルの部屋にそのままおいて帰ることにしている。

第二に、どうして茶碗とか、漆器の安物みたいな、
ふだん、家でも使えないようなものをくれるんだろうか、
と不思議に思う。
ホテルの結婚披露宴受付のところに行くと、
必ずそういう類いのものが陳列棚の中に並べてあって、
三千円の部とか、五千円の部とか、値段が明示してある。
ホテルで人を待っている間、私は時々、
そういう物の並んだ棚の中を覗いて見るが、
これはと思うものに出あったためしがない。
ああいうところで、予算に応じて、宴会係にすすめられて、
引出物を選ぶ人の気が知れないと思う。

第三に、引出物は、一人できた人に一袋くれるが、
夫婦できた者にも一袋しかくれない。
一つもらってもお荷物になるような、役に立たないものだと、
一袋でも要らないが、もし万一、
夫婦のどちらもほしがるようなものだったら、
どうするのだろうか。
夫が妻に譲るのだろうか。
それとも、妻が夫に譲るのだろうか。





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2012年12月21日(金)

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