まずアメリカは自国が最大級の産油国であることも手伝って、日本のように省エネに走らず、石油ショックのなかでも相変らず大型車を生産しつづけた。その結果、アメリカ国内における自動車のかなりのシェアを日本車に譲る結果になったが、アメリカ人自身はどうせ資源をいつか使い尽すことになるのであれば、アメリカの石油は最後まで温存して、中東の石油から先に使わせようじゃないかと、石油の輸入国に一大転換をした。
それができたのはアメリカが世界の基軸通貨である米ドルの発行権を握っており、石油が一バレル二十ドルになろうが、三十ドルになろうが、ドルを印刷する際にゼロを一つ多く刷り込めばどんな値上げにも対応することができたからである。実際にこのときに増刷された紙幣や基軸通貨であることを背景として創造されたアメリカの資金は一説に二兆ドルにも三兆ドルにものぼるといわれる。
このお金が産油国の手に渡り、いわゆるオイル・ダラーとなって、アラビアの王様やその関係者が世界中の資産を買いまくったり、ビバリーヒルズに豪邸を構えて贅沢三昧をする元手となったが、湯水のごとく使えば、山と積まれたお金でも早晩、その手を離れて金儲けのうまい人たちの手に渡る。いっぺん、アメリカ政府の手を離れた莫大なドルは小鬼たちのところに集められ、彼らの金捧となって威力を発揮するようになったのである。
このことは「強いアメリカ」を実現するためにソ連とわたり合って軍事力の増強に狂奔したレーガン大統領によってさらに強化された。もしレーガンが軍事費の増強を借金の代りに増税によって賄っていたら、事態は大きく変っていただろう。アメリカ人は節約を強いられてそんなにお金を使わなかったであろうし、したがって日本やアジアのその他の国々からの輸入もそんなには拡大しないですみ、対外債務もこれほど大きく膨れ上がらないですんだにちがいない。
アメリカ国民にしてみれば、税金でとられてなくなってしまうのと、国にお金を貸して元利合計返済してもらえるのとでは、天と地ほどの違いがあるから、お金の使い方にも当然違いが出てくる。その結果、消費意欲は衰えず海外からの輸入がふえつづけることになったので、その分、対外債務がふえて、日本はいうに及ばず、台湾や中国大陸までがアメリカの債権者として大量の米国債を所有することになってしまった。
なかでも日本銀行が外貨と外債をふやした分だけ日本国中が円の洪水になってしまった。そのために土地も株も大暴騰し、それに外国人買いまで加わって一大バブルの発生に弾みがついた。が、やがてその反動がきてバブルが崩壊し、大量の不良債権が発生し、いまだにその後遺症に悩まされつづけている。
しかも、ドル安が繰り返されて日本人はそのたびにせっせと稼いだ米ドル建て資産を目減りさせられただけでなく、国内における地価と株価の大暴落によってたいへんな損害を蒙った。これらの損害のかげには大鬼小鬼たちの暗躍もあるが、基本的にはアメリカ政府の通貨政策によってもたらされた面が大きい。
それに比べれば、今回の東南アジアに発生した通貨不安は、スケールが小さい分だけ大鬼小鬼の作為による面が目立つ。いまや為替市場は、かつての小豆相場と同じように実物取引よりはバクチの場に堕落してしまっているが、海外で悪銭を身につけた不良少年が、アメリカヘ戻ったら模範少年になっておとなしくしているとは考えにくい。おそらく、東南アジアでうまく一山あてた投機資金はアメリカに戻っても同じようにチャンスを狙って暴れまわるにちがいない。
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