私が前から考えていたのは資産インフレがあれば、景気が過熱しなくとも暴落はありうるということであり、もう一つは好景気があまり長く続くと、景気が過熱しなくとも、設備投資が過剰になって、投資が一段落した時点で過剰生産が目立ち、競争力の弱い企業から倒産が始まるだろうということである。
二、三十年前ならそうした企業の倒産は国内同業者のあいだで起った。しかし、地球的規模で大競争をする時代になると、勝敗は国境を越えて地球の反対側にまで及ぶ。じつはアメリカの好況が七年にも及んだのは、前はアメリカ人の投げた球が国境の壁にあたって返ってきたのがいまや地球の反対側まで飛んで、返ってくるのに少々時間がかかるようになったからである。
そうした目でみていると、過剰設備が表面化するまでは好景気が続くが、設備がほぼ完了していざ工場が稼働すると、過剰生産が目立って、たちまち不況が表面化する。それも世界的スケールで起るから、同業者のなかでもっとも弱体な企業が破綻に追い込まれる。
気をつけてみていると、九五、六年あたりから韓国の財閥が次々と金融不安に見舞われて倒産しはじめた。約三十社ほどある大財閥のうち、すでに七社が倒産している。日本の企業の倒産が金融や不動産やゼネコンなどバブルと関係のある業種に限られているのに対して、韓国ではなんと鉄鋼のような基幹産業や製紙、機械などの生産事業にまで起っている。安さと納期の早さで東欧や東南アジアやアフリカの発展途上国などに市場を拡げてきた韓国で輸出が頭打ちになっているからである。安いことには安いが、すぐ壊れることでもすっかり有名になって、新規の顧客が一巡するとリピートの注文がなくなってしまったのである。素材産業なら規格に合えば欠陥がそんなに目立たないですむが、造船や機械や自動車などの完成品となるとあとが続かなくなる。そのために輸出がとまってしまい、もともと借金体質の大企業が借金に借金を重ねて首がまわらなくなってしまった。
たとえば起亜自動車の倒産は韓国だけの問題ではない。世界的な自動車産業の過剰設備がもっとも販売力の弱い韓国のカー・メーカーにしわ寄せされたと思えばわかりやすい。
世界中を市場とする商品については、世界中で競争をするので、いちばん競争力の弱い国のいちばん弱い企業が犠牲になる。このことは自動車だけでなく、すべての国際商品にあてはまることなので、資金力が弱くて製品の品質に問題の多い東南アジアの発展途上国にしわ寄せされたとしてもけっしてあやしむに足りない。
つまり倒産や通貨不安はタイやマレーシアの問題と思ったら間違いで、世界に共通した難問であり、アジアだけがバタバタといって、アメリカの独り勝ちになる性質のものではないのである。アジアが混乱に陥れば、アジアで稼いでいるアメリカの大企業はたちまち業績が悪化する。げんに、香港株のハンセン指数が四日間で一万三千ポイントから一万ポイントを割る大暴落になると、たちまち海を越えてニューヨーク株の大暴落が起ったのをみてもわかるとおりである。
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