香港株がハンセン指数で一万ポイントを割った日、私のところへNHKの報道部から電話がかかって、「大陸の経済に大きな影響があるのではないでしょうか」と質問をされた。
私が「影響を受けるのは中国大陸でなくて、アメリカではないですか」と答えると、それではニュースにならないと思ったのか、たちまち電話を切られてしまった。
日本の報道機関ではアメリカの経済は順調で問題はないというのが常識である。この際、中国経済が東南アジアの通貨不安のとばっちりを受けておかしくなれば小気味がよいという心理も働いている。
しかし、私がみているかぎりでは、ならず者の投機資金の勢力はいまのところ中国大陸には及んでいない。香港が両者の接点になっているけれども、香港は国際資金の主戦場みたいなところだから、ゆすり、たかりには慣れているし、少々くらいの脅しには屈しないだけの抵抗力をもっている。米ドルとのペッグ制を死守するのが正しいかどうかは別として、ペッグ制を守ろうとすれば、投機資金の出動を抑えるために短期資金の金利を上げなければならない。金利を上げると株価のほうが犠牲になる。香港の場合は、ドル買いに資金協力をした銀行に香港当局が三〇〇%にも及ぶ罰金的利率を課したというから四日で二五%にも及ぶ株価の大暴落になってしまった。
そのあと、大暴落は中国大陸に連動する代りに、ニューヨークに連動して、アメリカでも十年前のブラック・マンデー以来の大暴落となった。クリントン大統領はすぐに「アメリカ経済は健全である」という声明を発したが、一九二九年の大恐慌のときにフーバー大統領が何回も同じことをいっているのを私は物の本で読んでいる。クリントンに続いてグリーンスパン米連邦準備制度理事会議長は今回の株価の修正は景気を持続させるためにもよいことだと肯定的な解説をしているので、アメリカの相場は小康を得ている。が、太平洋で発生した大型台風はこれでおさまったわけではもとよりない。
東南アジアで始まった通貨不安は東南アジアだけで終るよりも、これから全世界に伝染するところである。通貨の切り下げは韓国や台湾にも及んだが、オーストラリアにもヨーロッパにも及んでいる。中国大陸と香港は為替レートを死守しようと思えば死守できるだけの実力はあるように思うが、他の国々がレートを切り下げているのに、中国や香港だけがペッグ制に固執したら、対米貿易で大陸が不利な立場に陥ることは目にみえている。したがって、政策上、どこかで通貨政策を変えて、平価の切り下げに同調することも考えられないことではない。
もしそうなったら、アメリカの独り勝ちになるかというと、通貨の高い国になったら世界中から安い製品を売り込まれて、その重圧に耐えられなくなることは目に見えている。
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