それでもアメリカさえちゃんと物を買ってくれれば、日本としてはなんとかやっていけるだろうが、世界はアメリカだけでないし、アメリカの好況がいつまでも続く保証があるわけでもない。長い将来のことを考えなければならないし、近隣諸国との友好関係にも配慮しなければならない。そのためには一方的に黒字を続けることは許されない。輸出に見合った輸入をするか、でなければ観光客として儲けたお金を使いに行くか、あるいは対外援助という形でもいいから外国から稼いだお金を外国に戻してやる必要がある。
そんなことは誰でも知っていることだし、日本としてもそれなりの努力はしているつもりだろうが、いまのやり方では十分でないし、円安が進むと情勢はさらに悪化する。そうした相手国の不満を和らげるためには、円安にストップをかけなければならないし、それにもまして日本人の消費不足を解消しなければならない。日本人にいわせると、内需内需というがすでに満ち足りて買いたい物のない消費者に欲しくもない物を無理やり買えといっても無理というものである。だから日本の政治家や官僚はアメリカに内需拡大を迫られると、公共投資の拡大という提案でそれにこたえてきた。
しかし、ほぼ整備を終えた日本列島で新しい公共投資をやるとなると狐や狸の通り道に高速道路をつくったり、役所や文化会館の建物を新築するくらいの仕事しか残っていない。財政支出を赤字にしてそれをやってもゼネコン業者とその関連企業が潤う程度で、産業界全体への波及効果がない。じつは日本はすでに成熟社会の仲間入りをしていて、公共投資で景気の梃子入れをすることは難しくなっている。こうなったら消費の不足を公共投資で補うのでは間に合わず、消費そのものを刺激するよりほかないのである。
では、どうやって消費を刺激するのか。古い経済学によれば、消費が減少するのは消費にまわるお金が不足するからである。だから減税をして消費に使えるお金を増やせばよい、というのが政策担当者たちの常識になっている。人が何にお金を使うかは人によって違う。だから使えるお金を増やせばよいと思うのは間違いではないが、それは買いたい物がたくさんあるのに買うお金がない時代のことであって、お金があっても買いたい物のない社会にはそのままでは通用しない。お金があっても買いたい物のない人やお金があってもお金を使うことに不安を感ずる人に税金を負けてやっても、減税した分は貯蓄に向いて、消費に向わないことが多いからである。
いまはそういう時代なので、私は前章でも内需の拡大をしようと思えば、減税だけでは不十分で、「お金を使ったら税金を負けてやろう」さらに一歩進んで、「お金を使わなかったら税金でとるぞ」といった発想に基づく税法に切り替えることを提案した。
たとえば、資本金一千万円の零細企業の交際費の免税枠は年間四百万円までと決っているが、四百万円の枠一杯使わなかったら、使い切れなかった分は税金でとるという税法になおしたら、どこの会社でもあわてて限度一杯お金を使うだろう。そういう半強制的な思い切った税法でもとらないかぎり、消費の拡大などとても期待できないのである。
大企業はもともと交際費の枠を認めてもらっていないが、それでも盆暮には有税処理を承知のうえで大事な取引先には然るべき贈答品を贈る習慣があった。そういう長年の習慣でさえここのところ減少の一途を辿り、ついに銀行はお中元・お歳暮ゼロというところまで追い込まれてしまった。ただでさえ売上げの減少で頭を悩ましているデパートやスーパーがさらなる打撃を受けたのはいうまでもない。
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